これは傑作「怪談片目の男」ただしジャンル違い。

1965(昭和40)年東映(モノクロ)
監督:小林恒夫
脚本:高岩肇、宮川一郎
音楽:木下忠司
出演:西村晃、中原早苗、北条きく子、三島政夫、川津佑介

09年9月、渋谷シネマヴェーラの特集で見る。
一応は「怪談せむし男」に続く西村主演の怪談シリーズの第2弾ということらしいが、
どんでん返しに続くどんでん返しはジェームズ・キャメロンも真っ青?
ハリウッド映画もビックリの傑作でした。

釣り船が遭難し、水死した社長(西村)の遺体が上がる。
岩にぶつけたのか、左目は無残に潰れていた。
しかし実は社長の妻(中原)と、
社長から援助を受けていたにもかかわらず
彼女と肉体関係を持っていたカメラマン(川津)が共謀して社長を別荘の風呂で溺死させ、
遺体を底に穴が開いたボートに載せて発進させ、遭難死に仕立てたのだった。

別荘には口の利けない女中がいて、
会社の専務、女秘書、検死をした医師で社長の妻の兄、が集まった。
社長にもしものことがあったら遺産の全権を任されているという、
宇野という弁護士から各々に手紙が届いたからだった。
その別荘に車椅子の女がやって来る。
社長が妻と結婚する前に彼女に対して交通事故を起こし、そのため彼女は下半身が動かなくなり、
社長が毎月生活費を援助していた、そういう女だった。彼女にも弁護士からの手紙が来たのだった。
車椅子の女はそれでも自分の一生を台無しにしながらも援助を続けていた社長に感謝していて、
清純な心の持ち主に見えた。

そして・・・「東京から一人でやって来た」、と近くに勤務する警官が人形を持った少女を連れてきた。
少女は「パパに逢いに来た」と言う。もしかして社長の隠し子?
これで別荘には8人。
社長の妻、カメラマン、専務、秘書、医師、車椅子の女、そして女中、少女。
彼らはひたすら九州から来るはずの弁護士を待つが・・・。

夜更け、社長が得意だったバイオリン曲「トロイメライ」が聞こえたり、
牧師姿で黒いサングラスをかけた社長の姿が垣間見えたりで
別荘はヘルハウス化する。

社長の遺体を確かめようと棺を開けると、
社長の遺体はなくその代わりに姿が見えなくなっていた医師の死体があった。
そして社長の呪いなのか、次々に死者が出る。
女秘書は窓から現れた神父姿の社長を見て錯乱し、
難破した社長の釣り船まで行ったが海に落ちて姿を消す。
カメラマンは猟銃を持って屋根に上り社長の姿を狙うが、
煙突の所にあった、少女が持っていたはずの人形に驚いて屋根から転落、無残な姿となる。
妻は無人の風呂で熱湯シャワーを浴びて髪の毛が抜け自慢の美貌が醜く変化・・・。

遺産相続に絡む話、郊外の洋館のヘルハウス化と
ここまでは何だか「怪談せむし男」みたいなストーリーだな・・・とか思っていたら、
ハナシは意外な方向へ進むわ、どんでん返しは続くはで次の展開に興味がそそる深い脚本。
「西村ホラー(そんな言葉があるのか?)」では過去に観た「吸血髑髏船」「怪談せむし男」を超える出来(だと個人的に思う)。

妻とカメラマンが社長を別荘の風呂で溺死させる前、
社長は自分で運転して別荘に来ていた。
同乗者は女秘書。秘書は車中で社長に「定刻のクスリ」を飲ませる。
社長は錠剤の数も数えず薬瓶から直接ガバッとクスリを口に入れ、秘書から水をもらって飲む。
しかしそのクスリは手足をしびれさせる劇薬だった。
クスリの仕掛けは専務、秘書、医者の三人が仕組んだ計画だった


その後、妻とカメラマンにより湯船で二人掛かりの押さえつけで溺死させられた社長は、
カメラマンの運転する車に、夜釣りの格好で載せられ船着場に運ばれ、
自分のボートに釣竿を持った姿で載せられて、穴の開いたボートで出発させられる。
それを夜釣りに出たと思った専務一同は別の船で接近し、痺れ薬の効果を確認すると、釣り人姿の社長を海に突き落とした。
社長は妻-カメラマンラインと、専務-秘書-医者ラインの両方から別々に仕掛けられ、二度殺されたということになる


口の利けない女中が別荘の地下室から発見したアルバムの写真により、
社長は双子で、その弟は生まれつき左目が白濁していたことが明らかになる。
社長の弟(西村二役)はその容姿から別荘近くの教会で捨て子にされ、成長して神父をしていた
(そういや「怪談せむし男」も西村が一人で兄弟を演じていたが、やっぱりそういうシリーズなのか?)。

女中は鐘つき台で神父を「あんたは偽善者だ!」(口が利けないので字幕)となじるが、
どこまで神父と社長の関係を知っていたかは不明。

社長の遺産相続はさながら生き残った者が総取りのサバイバルトーナメントの様相。
専務は運転中トンネルで激突死、車椅子の女と少女が生き残る(相続に関係ない?女中も健在)。
しかし、黒サングラスの神父姿の社長?が彼女の車椅子を押して断崖絶壁まで行き、話を始める。

<神父たる社長の弟>は、
車椅子の女に社長を謀略で殺害した連中への復讐に協力するように依頼していた。
その時車椅子の女は、身から出た錆とはいえ
長年援助してくれた社長を忘れ(すでに社長が死んでいた、と認識したせいか?)
神父の弟を愛するようになる


そして神父を手伝って、別荘の怪異の演出に協力して
関係者の殺害に関与するようになる


ラスト近く、女の車椅子を神父が押して進む。
ここで女、本性を見せる。少女を殺せば遺産は自分が独り占め
清純派だと思っていたらやっぱり悪党
断崖絶壁の上で話が決裂すると、神父は車椅子を押して、女を殺そうとする
すると!女、足で蹴って抵抗
そう!車椅子の女は、実は回復していて立てるし歩けた(大笑)
回復しているのに社長の援助を受けていた、ということになる
この女!ひでー詐欺師だ
女は神父を車椅子ごと崖から突き落とし、最後の標的、隠し子かもしれない少女に近づく

少女に毒入りのミルクを勧める女。
しかしそれを崖から落ちたはずの神父が阻止
死闘は続いたが、神父は遂に正体を表す!
神父の正体は、死んだはずの社長だった
それも左目をコンタクト?で白目に偽装する周到さ
あの時、社長は仮死状態のまま海に落とされ、意識が戻った
そして泳いで教会へ行き、左目が白目の神父の弟に復讐の意思を告白するが、
弟は復讐を承諾せず、鐘つき台でもみ合っているうちに弟が落下死してしまう。
社長は弟に成りすまして、復讐の機会を狙っていたのだった

つまり、発見された死体は、神父だった弟のものだったのだ
映像では描写はないが弟とばれないために、左の目をわざと潰したのだろう
もみ合っているうちに女は倒れ、背中に銛が刺さって自滅する

宇野弁護士が、少女と女中しかいない別荘にたどりつく。
おそらく遺産は少女のものになるのだろう
それを見届けた社長は自決するため一人モーターボートに乗って、沖に姿を消す

結局、「怪談」と銘打ちながら心霊の類はまったく登場しない完全犯罪的復讐スリラー
何度も続くターンオーバーの連続に圧倒されました。かなり面白い、お勧め。
でもよく考えてみるとタイトルってちょっとヘン。
「片目の死体」や「片目が白目の男」は出てきますが。
やっぱり普通に考えるとタイトルは「怪談片目の死体」か「怪談白い眼」ですか。
「社長は二度死ぬ」・・・ちょっと違うなあ。

でも謎なのは、秘書が窓から神父が上がってくるのを見るシーン。2階だろ?何かトリック使ったのか?
それから車椅子の女に崖から突き落とされた神父が無傷のように再登場するラスト近く
社長が神父に変装するための白目もどうやって用意したのか謎。

あと序盤でカマキリの交尾の映像が挿入されていて、
メスカマキリに上半身を食われたオスカマキリが下半身だけで交尾しているシーンが見られるが
こりゃ「げに怖ろしきは女なり」って意味か。

(09.0926)



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