「散歩する霊柩車」水戸黄門対寅さん。

1964(昭和39)年東映・モノクロ
監督:佐藤肇
脚色:松木ひろし、藤田傅
原作:樹下太郎
音楽:菊池俊輔
出演:西村晃、春川ますみ、金子信雄、渥美清

<あらすじ>小柄なタクシー運転手の旦那(西村)と大柄で豊満な妻(春川)。
妻の浮気を外で知った旦那は、妻の浮気の清算とともに
浮気相手に妻が遺書を残して死んだことにして
その遺書を買ってもらう揺すりを妻とともに計画。
しかし大金が入るとハナシはどんどん複雑化・・・。

11年1月15日、渋谷シネマヴェーラの特集で見る。
西村晃が主演の怪談シリーズ?
しかしこの映画はホラー、怪談というほどのコワい内容ではなくむしろブラックコメディ。
幽霊の登場は?

オープニングで夫婦喧嘩、旦那が妻の首を絞める。

・・・その後、霊柩車に妻の遺体(実は生きてる)を乗せて走る旦那。
運転手は日当で雇った?本当の霊柩車の運転手(渥美清!)。
旦那は社長、病院の医師らの元へ行き、妻の死に顔を見せる。
妻は不倫を嘆いて遺書に浮気相手のイニシャルを書いて首を吊った、と旦那は説明。
代議士を目指す社長から500万円を受け取った旦那、
社長は帰る途中、たまたま勤務先(妻はホステスかそういう夜の仕事らしい)からUターンした妻と出くわし、
妻の姿を幽霊だと思いこみ卒倒して石の階段で頭を打って自分がホトケになってしまう。
喜ぶ夫婦。妻は大金を預かり最後の出勤へ。ところが行先はホテル。
ホテルの若いボーイがまた妻の浮気相手の一人で、妻を見かけるといたずらで旦那に電話をかけてしまう。
旦那はホテルにやって来て、医師(金子)と妻の密会の場を隣の部屋から見てしまう。

計画はそもそも医師と妻のものだった。妻は医師と500万を山分けしたら旦那のところから高飛びー、のつもりだった。
旦那は医師が妻の乾杯のビールに毒を持ったところを隣の部屋から見て、ボーイの声色を使って部屋へ乱入。
三人三様の主張をするが、結局夫婦が医師を殺す。
んで夫婦は医師の死体を、「木を隠すなら森の中」とばかりに病院の安置所へ。
この時夫婦は白衣をかっぱらって医者と看護婦に変装するんだけど、
春川ますみの看護婦姿が豊満なボディに白の短かいソックスが可愛らしく
ギャップのあるコスプレって感じで面白い。
このシーンは死体の運搬でふた笑いぐらいある。

医師の死体の処理が終わって帰宅した夫婦、妻は旦那に睡眠薬飲ませて眠らせ、
札束の袋持って3人目の浮気の相手(ホテルのボーイ)のところへ。
ところが札束だと思って持ってきたのは自分の死亡通知書!
あわてて戻ると旦那起きてた。

今度はホントに旦那が妻を絞殺。
旦那が妻の死体を棺桶に押し込んで寝てると、霊柩車の運転手がお出迎え。
運転手は長年ホトケを運ぶ仕事をやっていたせいでカンがいいのか、
妻が最初に霊柩車で運んだ時生きてたことを見破り旦那に金を要求。
旦那は続いて運転手も始末。
このシーン、藪の中に二人が入って行った後、
鳥が飛び立つだけで不安感を醸し出す絶妙の演出。
旦那は二つの死体を乗せ、カネを持って霊柩車で走り回る、
歌も歌ってる。クレジットには「主題歌」って出る。「今日は昨日の続き〜」とかいう歌詞。
だがしかし、旦那には妻の霊?幻?が見え始め・・・。
霊柩車が木に激突!旦那は木の上宙ぶらりん!札束ひらひら空に舞う・・・。

とにかく霊柩車が異常にインパクトあり。
タイトルバックで高速道路を疾走するシーンなど、まるで戦車並み。
まあよく考えてみれば映画の中の世界って
まず日常的な世界を創造してその中に非日常なスーパーヒーローやモンスターが登場するから目立つわけであって
そういう世界に実存世界の非日常たる霊柩車が普通に登場すると非日常たる存在がかぶってしまうため
そうそうストーリーに絡まない部分では登場できない、ってことがあるのでは。

また西村晃演じる小男のタクシー運転手の前半の非力さも笑えるんだけど、
後半の死体運びなどでのイニシアティブの持ち方は威厳すら漂う出来でそのギャップが面白い。

またしても菊池俊輔の劇伴は浮遊感たっぷりというか
お化け、って感じの「ひゅろろ〜」ってメロディーが聞かれ
なかなか侮れません。

霊柩車の運転手が渥美清ってのはビックリしましたが、
あの陽気さとペーソスを感じさせる雰囲気ではなく不気味な感じが出ているってところが特筆。
でも西村晃と並ぶシーンでは渥美清が異様に大きく見えるのは何故?

(2011.0115)



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