加藤武よ永遠なれ。
「怪談せむし男」

1965(昭和40)年東映(モノクロ)
監督:佐藤肇
脚本:高岩肇
音楽:菊池俊輔
出演:西村晃、加藤武、楠侑子、葉山葉子、弓恵子、 鈴木光枝

<あらすじ>宗方芳江(楠)が急死した会社経営者の夫の財産処理をしていると謎の洋館の存在が明らかになる。
行ってみると洋館は謎のせむしの男(西村)が管理していた。
洋館は義父(加藤)、霊媒師(鈴木)など次々と人を引き寄せるが、怪奇現象で多くの人が死んでしまう。
洋館に取りついていた霊の正体は・・・。

07年9月、渋谷シネマヴェーラの特集で見る。
西村晃がせむし男の役。
おいら的には彼は二代目水戸黄門様とか
「帝都物語」で本邦初の人造人間「学天則」を開発・操縦する西村博士(註1)とか善玉の印象が強いんだけど、
昔は悪役とか怪奇派を演じていたんですね。
余談ですが「水戸黄門」でも初代・東野栄二郎のヴァージョンで西村晃が悪役で登場する話があるらしい。
まるで「ゴジラ対メカゴジラ」で本物と皮を被ったニセのゴジラ(=メカゴジラ)が対戦するが如き、だ。
まあ「吸血髑髏船」でも怪奇な役やってたしなあ。

ちょっと脱線したけど、映画の話は何だか不条理の連続で
芳江が死んだ夫の棺を開けて顔を見ようとすると、夫の亡骸は花をくわえていたり、
洋館に行くとせむしが管理していて、襲いかかったカラスをあっという間に捕まえたり。
洋館のドアが開いたり綴じたり、夜な夜な謎の外人の亡霊が現れたり。
で洋館はどんどん人を引き寄せ、義父の医師加藤修、その助手、看護婦、弁護士とその恋人らがどんどん洋館にやってくる。
極めつけは通りすがりの霊媒師(鈴木、笑)。
この霊媒師の演技が鬼気迫るっていうか笑っちゃうっていうか。まあ見せ場です。
せむし男に取り付いている霊はせむし男の兄である「富永男爵」であり、
彼はこの洋館に少ーし頭の弱い女を囲って快楽の日々を送っていたが、
ある日陸軍の軍人が洋館に乱入し女を奪ってしまい、富永男爵は地下牢に幽閉されたまま死んでしまった。
男爵の霊はサイドカーで帰る軍人を立ち木に衝突させて殺し、以後はせむし男を操り洋館を訪れる人間を殺しまくっていた。

で途中から義父は芳江の体を求めて逆襲されたりで、結局せむし男以外全員死んじゃう。
外国人の亡霊は「ジュディ・・・ジュディ・・・」と叫んだりおぼろげに姿を現したりするんだけど、
この存在については最後まで説明がない。
せむし男だけが生き残って、富永男爵に操られるまま次に洋館に訪れるいけにえを待つ、という救いようのないラスト。

【加藤武】
芳江の夫の父である医者の役を加藤武が演じてるんだけど、
この人若い頃から全然変わんないな、って印象。
「幽霊など存在するわけがない!」ばっさり言い切るその姿勢、
医者っていう科学に近い立場だからしょうがないってところはよーくわかるつもりだけど、
後年角川映画の金田一耕助シリーズに登場する刑事の「よーし、わかったぁー!」って
独断・即決で言ってポン、と手を打つ役のまんま(笑)。
確かウッチャンナンチャンもネタにしてましたよね、「よーし、わかったぁー!」
どうなんでしょ、あれは地なんでしょうか。
おいら的には加藤武見てるだけでこの映画の半分ぐらいの面白さはあると思う。
末永く続けてもらいたいものです。
それでは最後に皆さんご一緒に!
いーち、にー、さーん!
「よーし、わかったぁー!」ポン。
*「せむし男」の映画の中では言わないのでお間違えのないよう。

註1:西村真琴博士は実際の西村晃の実父、つまり「帝都物語」で西村晃は実父を演じたことになる。

(08.0402)



偏食ムービーに戻る
目次に戻る
SAMEDASU扉に戻る

web拍手 by FC2