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<あらすじ>明治39年、陸軍測量部は国防のため日本地図の空白部分を埋めるべく
前人未到の日本アルプス・劒岳の山岳測量を計画し、柴崎(浅野忠信)が任を受ける。
柴崎は地元の案内人・長次郎(香川照之)らとともに難所に挑むが
日本山岳会のメンバーも初登頂を目指しやってくる。
そして山頂には意外にも・・・。
'10年8月7日、テレビで見る。
たぶんCGなしのフルリアル映像。
様々な色の山の景色の美しさと風雪の厳しさが伝わる。
雪の斜面、滑落のシーンがあるが、すごく危険そうでこれも迫力が伝わってくる。
浅野忠信の寡黙な測量士の演技が、
肩の力が抜けていてセリフもしなやか、
「自然体」という言葉がぴったりするぐらいで
そこに普遍性を持った一測量士の姿を浮かび上がらせている。
仲村トオル率いる日本山岳会のメンバーが登場すると途端に緊張感が生まれる。
モダン・西洋的な服装、装備でワラの蓑笠の測量隊を挑発。
「陸軍の威信」初登頂を目指す測量隊にプレッシャーがかかる。
陸軍の上部は威信にかけて民間人に初登頂を許すな、とするが
難関の劒岳はそう簡単に入口を見せない。
測量士は黙々と仕事(測量)をこなす。
その姿を見た山岳会のメンバーは心を打たれ
「あなた方は山を登ってからが仕事なのですね」と感じたままを打ち明ける。
長次郎は息子からの手紙に励まされ涙し、何が何でも頂上を目指すと一念発起。
しかしそのシーンから次はあっけなく頂上到達のシーンになっていて、ここちょっと拍子抜け。
頂上のシーンでは驚くべき事実が明らかになる。
ノンフィクション小説の映画化であり史実に則ってのストーリーだが、この結末は知らなかった(読んでないから)。
頂上には修行者が運んだと思われる錫(しゃく)があり、
それはおおよそ千年前のものと思われた。
つまり劒岳は前人未到ではなかったのである。
メンツだけでしかこの計画を考えていない陸軍測量部の上層部は
「初登頂」ではなかったことを快く思わず
柴崎らの努力を考えずに「なかったことにできないかね?」と言い出す始末。
最後に頂上を測量する隊の目に、山岳会が頂上に達するシーンが見られる。
手旗信号で交信する両者。
測量隊の登頂を最大の賛辞で称えたのは、意外にも敵視していた山岳会だった。
山を知る者同士の心の邂逅が感じられるラスト。
松田龍平のノブも最初は山岳会に負けたくないための焦りからか
周囲に迷惑をかけたりするが、作中で父になり成長していく姿は好感が持てる出来。
それにしても松田龍平はお父さんに似てきました。
宮崎あおいの良妻もなかなか可愛らしく意地らしく、
彼女が登場するシーンは微笑ましく感じる。
何しろ時間掛けて季節や天候の良コンディションを待ち構えて
丁寧に作られている感じが伝わり、
まあ逆にいえばそこまでやって失敗は許されないだろうな、と思う。
文芸作品でしかもノンフィクションにしては意外などんでん返しもあって面白い。
これはいい作品です。
音楽はクラシック多用で荘厳な雰囲気を醸し出す。
バッハの「G線上のアリア」、ヘンデルの「サラバンド」などが聴ける。
2009年日本
監督:木村大作
原作:新田次郎
製作:「劒岳 点の記」製作委員会
脚本:木村大作、菊池淳夫、宮村敏正
音楽:池辺晋一郎
撮影:木村大作
出演:浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、宮崎あおい、役所広司
(10.0808)
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