1974年・円谷プロ/チャイヨーフィルム(タイ)
監督:東條昭平
↑彼がウルトラ兄弟を差し置いてほぼ主役です。
<あらすじ>
舞台はタイ、仏像泥棒に殺害された少年はウルトラの母の力により白猿ハヌマーンとして復活、泥棒を退治する。
折からの干ばつで製造された人工降雨のためのロケットが誤爆、地下に眠っていた怪獣軍団が復活。
ハヌマーンはウルトラ兄弟と協力して怪獣軍団を退治する。
むかーし、休みの日の午前中にテレビつけたら突然放送していて
(映画の存在は知っていたがその日の放送の予定は全然知らなかった)、
何となーく目撃しました。
最近円谷とチャイヨー・プロの訴訟問題、封印映像関係の書物での露出などで目にすることが多いが
両者の関係悪化から考えると今後日本での視聴は困難かも(タイでは普通にソフトが売られているそうだが、
ソフトを入手してもPAL仕様なのでハードの方もないと見れないらしい)。
で記憶もおぼろげなので資料の助けを借りて書く。
資料によると正式なタイトルは「ハヌマーンと7人のウルトラマン」という訳になるそう(註1)。
7人なのはウルトラ6兄弟の他にウルトラの母が登場するから。
でも母だから「マン」じゃないよな、などと軽くジャブで牽制。
仏像泥棒を阻止しようとした少年は泥棒に銃で頭を打ち抜かれ死亡する。
このシーン、休みの午前中にファミリーで見てたとしたらきっとドン引きのバイオレンス度。
その状況をウルトラの星から見ていたウルトラの母は少年を不憫に思い、
伝説の白猿ハヌマーンとして復活させる。
ハヌマーンは巨大化し仏像泥棒を握り潰して復讐する(再びファミリードン引きだきっと)。
ウルトラの母も遠いM78星雲からそこまで細かに地球の出来事を観察してるもんだ、と感心。
ハヌマーンはそもそもはインド神話に登場する猿の神。
タイは仏教国だからインド神話が息づいているのか。
飛ぶ時は「卍」みたいな姿勢になり(特に足)、ウルトラマンらの水平飛行と違い直立した状態で飛ぶ。
また登場するとまず「うききー」ってな感じで引っかくようなゼスチャーをする。猿だから?
これはかなーり笑っちゃって、赤と銀を基調にしたスタイリッシュないでたちのウルトラ兄弟と組むのに違和感ありあり。
さて、その頃タイ国は干ばつに悩まされていた。
太陽が接近してる?
ハヌマーンは宇宙に行き太陽と話をする。
この作品世界の太陽は牛車に引かれている(笑)。
ハヌマーンは太陽に、地球に近づかないでくれと頼み、太陽もこれを受け入れたため干ばつは一時勢いを止める。
すごいなあハヌマーン、新ウルトラマン(=帰ってきたウルトラマン、今はジャックと呼ばれてるそう)は
べムスターに敗北した後太陽のエネルギーを取り入れるために
太陽に近づきすぎてセブンに助けられたっていうのに、ハヌマーンは太陽を説得しちゃうんだから。
その後タイの研究所から雨を降らせるためのロケットを発射するのだが、(この辺あんまり覚えてない)
ロケットが誤爆?して地震が起き、地中から5頭の怪獣が復活する。
怪獣のメンツはゴモラ、アストロモンス、タイラント、ドロボン、ダストパン。
・・・出自に関する脈絡ゼロの組み合わせ(笑)。ダストパンってそもそもミラーマンの怪獣だし。
アストロモンス、タイラント、ドロボンは「タロウ」に登場。かなーりの強豪たちのはずだが・・・。
怪獣の出現に、ハヌマーンも登場。最初は1対5の戦いでハヌマーン劣勢。
するとM78星雲からウルトラ6兄弟が助っ人に登場!
一気に7対5、すでに数字の上では制圧している。
対怪獣のフィニッシュは必ずハヌマーンが決める。手に持つΨ状の三叉の武器を投げつけたりしておいしい所はハヌマーン総取り。
アストロモンスは「タロウ」第一話に登場して腹部の口(チグリスフラワー)で超獣を丸呑みした、超獣より強い怪獣!
タイラントはウルトラ兄弟に倒された怪獣・超獣・宇宙人の怨念が集合した合体怪獣!
確か頭部がシーゴラス(註2)、耳がイカルス星人、両腕が超獣バラバ、
胴体が宇宙大怪獣べムスター、脚がレッドキング、背中と尾が超獣ハンザキラン、でよかったかな?
「タロウ」では兄弟を次々に倒しながら地球に接近、タロウと対戦する。
ドロボンは新ウルトラマンと戦ってカラータイマーを奪ってしまった!
そんな強豪怪獣が次々とあっさり気味にハヌマーンにやられてゆく(笑)。
最後に残ったゴモラは、怪獣軍団のボスらしい。
ゴモラは念力攻撃でウルトラ兄弟の動きを止める。
一番最初のウルトラマンに登場したゴモラは古代恐竜の生き残りだったんだけど・・・そんな超能力あったのか?
しっかしそんなゴモラもウルトラ兄弟に両腕を押さえられ、ハヌマーンの攻撃で真っ二つ、最後は7対1のウルトラリンチ!
ということでタイに平和が戻るのであった・・・。
資料によるとその後ハヌマーンは少年の姿に戻るらしいが、よく憶えてません。
とにかくタイの文化が根強く作品に反映されていて、
ウルトラマンとタイ文化っていうのは合わないんじゃないかと感じた次第。
まあウルトラシリーズのワンエピソードとして見るっていうのなら楽しめるかも、って国内じゃ例の問題でソフト絶版(笑)。
いや楽しめないかも。
昔からウルトラシリーズ見てた人が何の予備知識もナシでファミリーで見たとしたら
頭上にクエッションマークが飛び交い、
ハヌマーンがらみの残虐シーン&牛車に引かれる太陽でドン引き間違いなし、と見た。
今じゃトンデモ映画の仲間入りってところです。
余談ですがくだんの裁判で円谷プロが全面勝訴したっていうのは何より。
(08.0331)
註1:朝日ソノラマ「ファンタスティック・コレクションNo.10 ウルトラマンPt.2」では
原題「白猿ハヌマーン&ウルトラ6兄弟」との記述が。
またキネマ旬報DBでは原題「飛天超人」とある。
註2:シーゴラスは帰ってきたウルトラマンに角を折られて海に帰っていたので死んではなく
タイラントに取り込まれているというコンセプトがそもそも謎。
参考文献:朝日ソノラマ「ファンタスティック・コレクションNo.10 ウルトラマンPt.2」昭和54年
洋泉社「悪趣味邦画劇場」1995年
アスペクト「封印映像大全」2008年
キネマ旬報DB
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