切鮫と千里眼の居酒屋トーク:第7回
ラッシャー木村追悼トーク&まぼろしの白鳥を追って
構成:千里眼、1109切鮫
2010年5月末、都内某所・・・
友里「えっーと、ここじゃないかな、ガード下でぇ、ビニールテントでぇ・・・、
あのちょっと、ちょっと、焼き方のお兄さん、
先週の土曜日にここでおじさんふたりがプロレスの話しながら、ホッピーがぶ飲みしてたの知らない?」
焼き方のお兄ちゃん「あぁ、あのお二人連れ、よぉーく覚えてますよ。だってあんまり面白いんで」
友「面白い?それってラッシャー木村がどうした、とか、そんなことばっかりまくし立ててただけなんじゃなかった?」
兄ちゃん「そう、そう、そうなんですよ。確か・・・」
千里眼(以下、千)「いやぁ、残念だなぁ、ラッシャー木村、お亡くなりになりましたね」
1109切鮫(以下、切)「合掌。ノアの東京ドームで出たビデオレターでの引退宣言のときにずいぶん痩せてたんで心配したんだけれど」
千「それにしても、翌日の東京スポーツのあの集合写真、凄いメンバーだったよね。セメント総進撃」
切「鉄人テーズ、鳥人ホッジ、地獄の料理人シュミットらを従えた当時若手のラッシャーさんがなぜか真ん中。
さすが東スポ。とっておきの写真出したね。
ってそこまではいいんだけれど、グレート草津のポーズがちょっと、ね」
千「あの腕を外側に曲げたポーズでしょ」
切「あのポーズって剛竜馬もおんなじだったよ。昔、新日の蔵前で見たもの。剛対藤波のWWWFジュニア戦のとき。
大阪で剛が藤波に勝って、そのリターンマッチ。最初で最後のチャンピオンとしての新日リング登場。
それで君が代がかかってる間、ずっとあの“草津ポーズ”だったの、しかもベルト巻いて。
変だなあ、って思ったね。脇が甘いってことなのかなあ」
千「まぁ、草津はともかく、今回は東スポの記事そのものにも興味深い話があったよね。
まず何と言っても“白鳥”だよ。今まで聞いたことなかったもの、木村の流血戦が白鳥の画面に切り替わる話なんて。
まぁ、国際プロレスがテレビ東京で放送されていた時代は、自分が住んでたのは東京じゃなかったから、
『白鳥』を信じるも信じないも、言いようがないんだけれどね。
切鮫さんは目撃したことないの?白鳥を」
切「いや、正直、おいらも見たことないんだよね、白鳥は。
記憶じゃ木村の金網戦はアンダーテーカーかスーパー・アサシン戦あたりから放送されはじめ、
それまではアナウンサーが『○月×日、木村が×××を金網戦でKOしタイトル防衛!』みたいなことを
番組中にアナウンスしてただけだと思うんだけどね」
千「白鳥は東スポのファンタジーなのかね」
切「大体だよ、もし放送に耐えない場面があるなら、そこだけカットすればいいだけのことなんじゃないのかな。
だってテレ東の国際はほとんど録画放送だったわけだから。
生放送で急遽画面差し替え、なら白鳥の登場もわかるけど、
録画だったらカットして放送すればいいだけの話。白鳥の出番はありえない」
千「それもそうだ。それにさ、木村の流血戦で『白鳥』なら、
全日のファンクス対ブッチャ−・シークだって『白鳥』出さないとまずいんじゃないの?」
切「全日とは局が違うからね。記憶じゃ全日のテリ−対ハンセンは、ハンセンがテリ−をブルロープで首吊り状態にする、
いわゆる『テリ−は牛ではない』の時は、その場面をカットして放送してたね」
千「カットと言えば以前、ジプシー・ジョー対浜口か大位山の金網で、ジョーがハサミを凶器として使ったら放送がカットされたっていう話をしてましたね。
ブッチャ−もデストロイヤーをビール瓶で殴ったりもしたけどあんなのみんな『白鳥』にしなくちゃいけないんじゃないの。
それから海外の試合でも、ストーンコールドがファ○○!のゼスチャーで指立てたりすると指にモザイクがかかったりするんだけど、
それも『白鳥』で処理できる」
切「何でもかんでもまずいシーンは全部『白鳥』で隠す(笑)。
これなら『獣人雪男』も『ノストラダムスの大予言』も『江戸川乱歩全集』も全部放送できる(笑)。
こりゃ新しい用語入りだよ、『白鳥』(爆笑)」
千「まあまあ、暴走はこれぐらいにして(笑)。ところでラッシャー木村と言えば『こんばんは』にも触れないとね」
切「あれさ、27日の東スポのコラムで再録されてたけれど
田園コロシアムでは『こんばんは』とは言ったけれど『ラッシャー木村です』とは言ってないんだよね。
『こんばんは、ラッシャー木村です』っていうのは後のビートたけしのギャクなわけで・・・」
千「あぁ、あのコラム、見た!見た!
ただあのコラムもちょっと違うように思うな。
木村が『こんばんは』と言っちゃったら場内爆笑と書いてあったけど、
爆笑というより失笑、蔑みのムードだよね。
だってさ、あの時、木村は『あーのですね』とつなげて『我々は今、秩父で特訓をして』とかなんとか言い出して、
『秩父』っていうのがあまりにも場末感丸出しで」
切「木村の『こんばんは』ってあいさつ聞いて、
対抗戦の殺伐とした雰囲気を想定してた?猪木が
かなりムッとして『ダァーン』とリング踏みつけて、いらだって動き回って」
千「秩父だもんなぁ。特訓ってさ、ハワイとかグァムとかでやるんじゃないの?」
切「まあ、国際は潰れてハワイに行く金なんてあるわけないし、でもせめて『或る所で』とか『秘密の場所で』とか言えばよかったのに」
千「そこが木村の人の良さ、かねぇ」
切「アニマル浜口がフォローしようとして大声出して『10月8日を見て下さいよ!おお、来いよ、お前』って・・・」
千「あれって、当時はなんで関係無いタイガー戸口にそんなこと言い出すのかわからなくて、無差別テロみたいに見えたけど」
切「いや、あれは田園コロシアムで直接見てたけど、戸口の後ろにいた、蔵前での浜口の対戦相手の剛竜馬に言ったんだよ」
千「あの草津ポーズで?(笑)」
切「まあ、それはなかったと思うけれどね。
しかし、哀しいのは国際プロレスの最後の地がさ、羅臼でさ。羅臼、知ってる?」
千「昆布で有名な北海道の(笑)たしかさ、その最後の会場っていうのは『羅臼総合体育館』とか『羅臼スポーツセンター』とかいうところではなくて」
切「羅臼って、海の向こうに北方領土が見えるんだよね。日本最北端。
試合場は単なる野ッ原。たしか今でも写真が掲載された専門誌を持ってたと思うんだけど、野ッ原に幕張って、イス並べただけ、みたいなところで」
千「しかもそこから東京に帰る金無くて」
切「そう、たしかGスピリッツのマイティ井上のインタビューに出てたんだと思うけど、
帰り道で金足りなくなると、広場で勝手に興行やったりしたっていうんでしょ。
まだ目撃者が名乗り出てないから真偽のほどは不明だけど」
千「哀しすぎる話だよね。そのころ新日はどこ行っても超満員で、全日だって豪華外人でやってたわけだし・・・」
切「そういった悲喜こもごものレスラー人生を送ったラッシャー木村に、乾杯」
兄ちゃん「・・・たしか、まだまだいろんなこと話してたんですけどね。
伝染病で殺された怨念で牛の怪獣がどうとか、
水戸黄門の甘えがどうした、とか。
もう注文取りに行くのが楽しくって。それで、ね」
友「それで?」
兄ちゃん「お勘定のときに少しまけてあげたんですよ。そしたら『トークで得した』とか、
『我々の話に対価が生まれた』とか凄く喜んでくれて」
友「えぇー、あんた、本当にあのふたりの話が面白かったから、ってそれだけの理由で払いをまけてあげたの?」
兄ちゃん「えぇ、まぁ、社長にばれない程度なんですけど。お姐さん、もしかしてそのことを・・・」
友「そうよ、あのふたりさんざん自慢してるから、確かめに来たのよ。
あんたね、目ぇ覚ましなさいよ。味占めてまた来るわよ、あのふたり」
兄ちゃん「いやぁ、何回でも来て貰いたいですね。板場の兄貴も『今度来てくれたら俺にも教えろ』って言ってくれてます」
友「信じらんない。本気?もうこの話はいいわ。あたしも喉渇いたから、とりあえずビール、生の大で。
あとはね、メニューのこのMMQ(エムエムキュー)っていうやつ。何なの、MMQって?モダン・ジャズ・カルテット?」
兄ちゃん「残念。それはMJQでございます」
友「そっかー。
とにかくそれお願い」
兄ちゃん「かしこまりました、エムエムキューいっちょう」
友「こ、これがMMQなの!?」
(伝聞だけでまとめた友里はともかく、まだ続く?
『白鳥』の謎は解明されるのか?またMMQとは!)
(2010.0604)
*残念ながら千里眼さん逝去のためこれで最終回。
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