巨星墜つ 作曲家伊福部昭氏2006年2月8日逝去



2006年2月8日、作曲家伊福部昭氏が91歳で永眠された。
高齢であられたため近い将来にこの日が来る、とは考えていたが実際にそれが現実のものになると、やはり悲しいです。
元音大の教授であり生前400本以上の映画音楽を担当した氏であるが
やはり最大の功績は史上屈指の特撮映画「ゴジラ」の作曲に携わったこと、
そして一連の特撮作品に関わったことではないか。
ということで氏の作品に関する印象を思いつくまま書き連ねて、SAMEDASUにおける氏のメモリアルとしたい。

【ゴジラのテーマ】
そもそもは「ゴジラの動機」―ゴジラが登場するシーンの曲―と
ゴジラ迎撃へ人類が立ち上がるシーンでの曲という別のシーンでかかる曲だったが
昭和末期〜SF交響ファンタジーを経ての平成での氏復活「ゴジラvsキングギドラ」で合体。
ゴジラ出現から進撃するシーンでの使用が頻繁となる。
巨大怪獣の暴力性を表現する裏に密かに示されている神々しさが伺われる。

【聖なる泉】モスラ対ゴジラより
ザ・ピーナッツの歌による。
原水爆実験で汚染されたインファント島で唯一残された美しい場所、泉で小美人が歌う。
はかなさ、哀愁が漂う空間を構築する曲。
平成版「ゴジラvsモスラ」でも今村恵子、大沢さやかのコンビで再現。

【マハラ・モスラ】モスラ対ゴジラより
同じ伊福部版モスラの曲でもこちらは力強さを感じさせる曲。
卵から孵化する幼虫に、小美人が歌で力を与えるシーン。
インファント島で踊る住民たちの姿が重なる。


【L作戦準備】サンダ対ガイラより
俗に「メーサーマーチ」と呼ばれている、その名のように「メーサー殺獣光線車両」が活躍する場面でかかる曲である。
L作戦とは上陸し山に逃げたフランケンシュタインの怪獣ガイラを殲滅するべき陸上自衛隊が実行した作戦で、
メーサー光線と川への放電でガイラを攻撃する。
曲の第1主題は作戦準備に取り掛かる自衛隊のひたむきな行動を表していて
作中の隊員の設置確認の声、
「第一プラス線よし」「第一プラス線よし」
「第一マイナス線よし」「第一マイナス線よし」という点検の声が相乗効果。
第2主題は光線によりガイラを攻撃する華々しさ。
ガイラを攻撃する光線が、逃げるガイラを追って森林の樹木をなぎ倒していく映像は迫力。
ブリッジを経ての第3主題は後年の「怪獣総進撃」の後半部分と同じメロディー。
一種の悲壮感と力強さを同時に保持することに成功した名曲。

【ゴジラvsメカゴジラ:メインテーマ】
強大な力あるいは目的(打倒ゴジラ)に立ち向かうチャレンジャーたる人類の決意を土俗的なリズムで表現。
現代科学と未来の技術(註1)の粋を集めたメカニックの権化メカゴジラを
電気的処理をした音でなしに打楽器で表現したところが出色。
映画のオープニングで格納庫で整備中のメカゴジラのアップから画面が引きになり、
一瞬画面全体が赤く光ったと思うと元に戻った画面の外から映画のタイトルが踊りこんできて
画面の中心で金赤のタイトルロゴが決まるところは何度見ても鳥肌が立ちそうな迫力。

【ゴジラvsメカゴジラ:エンディング】
命あるものと命なきもの(機械=メカゴジラ)の戦いに勝利したゴジラがベビーゴジラを従えて海へと還るシーンの曲。
同映画内の「古代植物」のライトモチーフあるいは「ラドン復活」のシーンの曲と同じメロディー。
映画のテーマと思われる「生命そして愛」を荘厳さを感じさせる女性コーラスで表現。
「原初」「古代」的な味わいも感じさせる。

【赤き龍のテーマ】ゴジラvsデストロイアより
「赤き龍の―」は同映画のサウンドトラックCDの解説に記されていた表記。
映画のオープニングで夜景の香港に出現した、
病んで苦しみ、赤く発光し白煙を吹き上げる「死の淵のゴジラ」のテーマ。
「vsキングギドラ」でのゴジラザウルスのライトモチーフに似たメロディー。
金管の重低音が凄み。打楽器の一定のリズムは苦しがるゴジラの心臓の鼓動のように聞こえる。

(2006.0211、今後追記あり)

註1:「GvsMG」のメカゴジラは、「vsキングギドラ」で23世紀の未来からやってきたメカキングギドラの機械部分を研究して製造された。


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