「障害者」の権利がうばわれる「公的介護保険」
文責 宮坂 知孝
「公的介護保険」に対する考え方
 国会で「介護保険」法が決められたとき、異例のことですが多くの付帯決議がなされました。その中に「事業計画を作るにあたっては、被保険者「当事者」の意見を十分反映する事」という決議がなされました。
これまで、社会福祉分野における「保健・福祉サービス」は、税金だけを財源とした「措置制度」として主に行政機関が行ってきました。つまり、日本国憲法における「生存権」や「幸福追求権」を保障するといった考え方のもと、国民の権利として、公的責任において行われてきたのです。「公的介護保険」は、これらの「保健・福祉サービス」等を「措置制度」から「保険制度」による契約関係へと移行させるという意味で、これまでの社会福祉の構造を大きく変えてしまうものと言えます。
「公的介護保険」は、未だ細部に渡って明らかになってはいませんが、「保険あって介護なし!」と言われるように、様々な問題を抱えています。「公的介護保険」が抱えている問題点について、改めて整理してみます。
・保険料が高額になり、生活を圧迫する可能性があることです。
厚生省の試算によると、「公的介護保険」の開始時である2000年において、月額の保険は2、600円程度だと言われている。しかし、田無市の試算によれば、現在のサービス水準を維持するとすれば、月額8、000円以上は必要となると言われているのです。
保険料の決め方は、「介護保険」法によると65歳以上の方「第一号被保険者」の保険料は、各区市町村が決定する事になっている。決める手順は次のようです。
第一段階で、区内の高齢者等の状態を調査して必要量を割り出します。
第一段階で、区内の高齢者等の状態を調査して福祉サービスの必要量を割り出す。
第二段階で、区内でどの位の福祉サービスを用意するのか事業計画を立てそれに必要な総事業費を計画します。
第三段階で、その総事業費を区内の第一号被保険者の数で割って一人当たりの保険料の平均値を出し、五段階位所得水準別に保険料を決定する。
細かな規則は色々ありますが、これがおおまかの流れです。
ですから区によって、また所得水準によって保険料は、まちまちです。
2、500円程度というのは厚生省が出した示した全国平均にすぎないのです。
・「公的介護保険」によるサービスを受ける場合、さらに、利用料の1割を自己負担しなければならないという事です。これは特に低所得者にとって、生活を圧迫する事になるからです。
・「公的介護保険」は、開始時において、介助需要の4割しかカバー出来ないと言われています。厚生省も2012年においてさえ、介助需要の8割程度しか対応出来ない事を認めています。高額な保険料を支払っても、必要なサービスが受けられない可能性があるということです。
・ 要介護認定基準が、現実の介助需要とかけ離れていおり、要介護認定基準として、要介護度が1〜5まで設定されている。しかし、実際的な介助需要が必ずしも反映されていないため、介助を必要としても十分なサービスガほとんど受けられない可能性がある。
・65歳以上の障害者及び40歳以上の特定疾患による難病者に対するサービスは、大幅に低下する可能性があるのです。これまで全身性障害者に対する介護派遣事業等、様々な介助制度を受給してきた65歳以上の障害者や難病者が、要介護認定基準を基にサービスを受けることになります。その事によって、サービス内容が大幅に低下する。例えば東京都や大阪府において、現在、月60万以上の介助料を受け取っていた障害者が、例え要介護度5になったとしても、月受けられるサービス限度額は29万円〜35万円程度になる。今後、2006年に若年障害者が介護保険の対象になれば、さらに問題が深刻化する可能性があります。
・「措置制度」から「契約制度」に移行した場合、弱者に対する権利擁護の仕組みが必要になるし、併せてサービスの多様化に伴う負担について、弱者に対する配慮が必要となります。
「措置制度」は、国民に社会福祉の請求権があり、権利保障を前提としており、行政不服審査法によって不服申し立てができるとともに、憲法に基づいて争訟権が確保されています。
しかし、「契約制度」は、「契約自由の原則」を前提にしており、契約については契約内容の範囲でその不履行についての給付の請求は、出来ますが生活実態に即して権利要求をする事は法律論から見た場合難しいと言われています。
「措置制度」から、「介護保険制度」になるのを認めるわけでは無いが、現在の制度を後退させるのでは無く、「措置制度」は、「措置制度」として残し「公的介護保険制度」を利用できるようにしなければならないと思います。
福祉サービスで「高福祉」を行う場合保険料も高くなり、逆に保険料を低く抑えると福祉サービス水準も低くなり選択が迫られるのです。
高福祉ー高負担と低福祉ー低負担を選ぶかあくまでも区民自身・「障害者」・老人がその選択をしなくてはそこで「策定作業」に参加して各自の意見を反映する必要があると思うのです。
・厚生省は、「公的介護保険」の実施主体を「区市町村」に移行していく事によってサービスに関する苦情処理の仕組みを造ろうとしているのではないかと 思うのです。これは、社会福祉構造改革の名の下にターゲットとなっているのは、社会福祉の公的責任の中軸を担ってきた措置制度を廃止するところにあります。まず措置制度廃止するこそ社会福祉の基礎構造改革の起点になっております。
措置制度に関して「措置は区市町村による行政処分」であるという点をとって国民の権利としての側面がほとんど無視されていた評価になっていますが、そもそも行政法では、行政庁での処分=決定をしさしており、国民の側から請求して求める利益的な措置決定をも含めているのです。

「介護保険」の仕組み


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