「イップ・マン 葉問」愛のあるカンフー映画。

イップ・マン 葉問 [DVD]

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2010年香港
原題:IP MAN 2
監督:ウィルソン・イップ
アクション監督:サモ・ハン・キンポー
音楽:川井憲次

出演:配役
ドニー・イェン:イップ・マン
サモ・ハン・キンポー:ホン(洪拳の師匠)
ダーレン・シャラヴィ:ツイスター(ボクシング世界チャンピオン)

<あらすじ>香港に来たイップ・マン一家。イップ・マンは知り合いの新聞の編集長から
新聞社の屋上を道場として提供されたため弟子を募る。やがて弟子が増えてきたが
ある日洪拳を使う若者が弟子といさかいになり、イップ・マンは弟子を返してもらうために市場に行き乱闘になる。
乱闘を収めたホンから、武会に加入しないと香港では武館を開くことはできないと言われたイップ・マンは
資格を得るための査定試合の場へ赴く。
不安定な円卓の上での戦いでイップ・マンは勝ち進み遂にホンと対戦するが決着はつかなかった。
ホンや他の師匠はイップ・マンの実力を認めたが、ホンはさらに上納金を納めることをイップ・マンに告げる。
しかし彼は従わなかった。
その後再度ホンと対戦したイップ・マン。だが二人は一時的に和解する。
香港で武術大会が開かれ、イギリス人ボクサー、ツイスターが中国武術を罵倒。
リングに上がってツイスターと対戦したホンだが、ツイスターの攻撃を受けリング上で死んでしまう。
香港警察は騒ぎを収めるために再度ツイスターと中国武術の試合を行うことを発表。
記者会見の場にイップ・マンが現れ静かに対戦を表明。
中国武術の誇りを背負ったイップ・マンの戦い、異種格闘技戦の幕が切って落とされた。

'11年2月11日、新宿武蔵野館で見る
この映画館で「イップ・マン」を見た人が5000人を超えると
「イップ・マン 序章」が上映できるそう。
映画館のロビーには劇中で稽古に使われる木人のモデルが飾られ、観客数も多い。

「イップ・マン」は実在した高名な詠春拳の使い手で、
ブルース・リーに詠春拳を師事したことで有名な師匠。
この作品は「2」なのでイップ・マンが肩を狙撃され(日本軍?)
香港に疎開するシーンから始まる。

序盤はなかなか弟子が集まらない様が描かれていて
家賃が払えなかったり、
カラの屋上でさびしく煙草をくゆらせていると(武術家なのに煙草はオッケーなのか?)
大家さんが洗濯物を干しに来る。で洗濯物干すのを手伝ったりする。
この辺「稼げない武術家」の悲哀がまざまざ。

イップ・マンの見せ場は3回。市場の乱闘シーン、ホンらとの円卓の上での査定試合、
そしてクライマックスのツイスター戦。

市場のシーンでは大勢を相手にするのでイップ・マンも武器を使用。
包丁の二刀流やパレット(重い荷物の下に敷く台)で相手を蹴散らす。

査定試合ではイップ・マン2連勝。試合は線香の火が燃え尽きるまでに負けたら失格というルールで
食堂みたいな場所で不安定な丸いテーブルの上で戦う。落ちたら負け。
周囲には椅子をひっくり返してたくさん置いてある。
ベテランが「昔は刀だった」という。椅子の足を刀に見立てている。
この辺の戦いはまあアクロバチックな描写が多くてジャッキー・チェン後のカンフー映画って感じです。

伝統武術対西洋の格闘技、ってスタンスは「姿三四郎」でもあるモチーフで
偉そうで大きな西洋人を相手にする、というもっとも燃えるパターンです。
記者会見場でツイスターが「俺に挑戦してくる奴はいないのか」と大きな線香に火をつけて
「これが燃え終わるまでやってもいい、燃え終わった頃には中国武術は全滅だ」などと挑発。
イップ・マンが人を分けて現われ、静かに対戦を表明します。
この「静かな闘志」がこちらも燃えさせてくれるんですよ。
ラジオで香港中に生放送され多くの人がイップ・マンの勝利を祈ります。
中国拳法対ボクシングの異種格闘技戦ですが、ラウンド制以外ルールは不明。
イップ・マンは素手にいつもの着衣、ツイスターはグローブ着用。試合は投げたり平気です。
詠春拳のスタンスから言えば手の攻撃しかないボクサーとの対戦は
よほどの体格差がない限り秒殺で圧勝してしかるべきですが、そこは映画です(笑)。
ダウンの応酬でイップ・マン苦戦。

イップ・マンの蹴りを封じるため、
イギリス人主導の主催者・審判側が第3ラウンドから「蹴り禁止」のルール変更。

従わない場合は失格(試合放棄?)でツイスターの勝ちとすると宣言。

これはすごいっすね。主催者側のツイスターを勝たせるための悪意がぷんぷん感じられて
ヒールっぷりをさらに増長して我々観客を煽ります。
イップ・マンさらに苦戦。しかし相手の腕を攻撃してパンチを弱くして連打、連打で勝利!
イップ・マンはマイクを向けられると泣かせるセリフで人々を説き会場は拍手喝采。
誠実そうなマスクのドニー・イェンがピタリとはまってます。

ツイスターといい、彼の側である香港警察の署長(イギリス人)といい、ホントに憎々しげな表情で悪役を演じています。
署長の下で賄賂を回していた警察関係者がホンの死で怒って寝返って新聞社にネタ提供、署長を更迭に追い込むのは気持ちいい。

ラスト、イップ・マンの元に子供の入門者が来ます。
子供の不遜な態度にイップ・マンは笑いながら「大人になってから来なさい」と追い返すが、
この子供の、鼻を指でこする仕草!子供は「李小龍」と名乗ります
そうです、子供のころのブルース・リーってことですね

カンフー映画久々に見ましたがこれほど愛に満ちた作品は初めてですね。
相手に対するリスペクトの気持ちが常にあるので復讐が結実するとか憎悪で終わらないところがいい
(そういうハードな部分では落ちますが)。
それでいてファイティングシーンの質が落ちていない。戦いと愛の融合に成功した一作です。
終了後も心が暖まるようないい映画です。

でも最後にちょっとだけ書くと、
ツイスターに勝利したから弟子がたくさん来て月謝を受け取れるようになったはずで
中国武術の誇りとは別にそういう打算的な部分というものもあってのツイスター戦だったと思うのですが、
そういう部分を感じさせない出来になっているというのも感心です。

(2011.0213)

「イップ・マン 序章」はこちら
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