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「クロウ」あらすじ(1994年米作品)
1年前恋人とともにギャング団に殺されたロックシンガーが冥界の鴉の力を借りて復活、復讐を果たす。
94年10月1日。
ブランドン・リーの「クロウ飛翔伝説」を見に行く。
ストーリーはなんだか薄いけど、ブランドンの演技がすごい。
死を予感しているような、生に執着しているような、そんな妙な迫力がある。
恋人とともに虐殺されたミュージシャン、エリック(ブランドン)が復活した姿が無表情なゾンビではなく
弱点があったり、生き残った者たちに対する優しさがあったりして新しいキャラクターの創造に成功している。
普通、幽霊などこの世に恨みを持つものの復讐譚は残忍であり、無表情に相手を殺すというパターンが多かったが
このブランドン扮するエリックは泣いたり苦しがったり、感情表現が強烈なのである。
これは絶対シリーズ物になるであろうし(註1)
ブランドンはこの作品でこれからの可能性を感じさせる働きをしたというのに、現実は残酷である。
ブランドンは撮影中の事故で帰らぬ人となってしまった。
拳銃の暴発?なぜか拳銃に実弾が・・・。
それにしても「死」というキーワードでひも解いてみれば、ブルース・リーとブランドン・リーは数奇な運命でつながった親子だ、と思う。
思いついたままに箇条書きすると
・ブランドンの死は父ブルースの死からちょうど20年後。
・ともに撮影中か撮影途中の死(ブルースの「死亡遊戯」は「燃えよドラゴン」での撮影中断後の再開寸前だった)。
・ジェイソン・スコット・リー主演ブルースの伝記映画「ドラゴン ブルース・リー物語」(93年米)の中にはブルースの夢の中に
死神が現れて息子のブランドンを連れて行こうとするシーンがある。もちろん「クロウ」以前に製作された映画である。
・ブルースが最後にかかわった作品「死亡遊戯」は死後5年を経て大幅なストーリー改定、生前の作品からのライブフィルム挿入、
代役の出演などの苦労を経て完成されたが
そのストーリーはアクションスターがマフィアとのいざこざから映画撮影中に狙撃され顔の形が変わるほどの重傷を負うが
死を装って(劇中敵役の側からすると殺したはずなのに甦ってきたようだろう)潜伏し変装やカンフーを駆使して復讐を果たすという話。
「死亡遊戯」は、「クロウ」劇中黄泉の世界から甦り復活した後は白塗りの顔で通し(変装、か)実際の撮影では撮影中に実弾が命中して落命する
ブランドンの運命そのままを予言した映画とはいえないか。
「死亡遊戯」はブルース以外の部分でも不吉なことが多い作品で、
ブルース死後撮り足したパートで新聞記者を演じていた俳優ギグ・ヤングは「死亡遊戯」撮影中に知り合った女性と結婚したが
3週間後(「死亡遊戯」日本劇場公開から半年後)新妻を射殺した後自殺したそうである。
またブランドンが「クロウ」以前に主演した映画「ラピッド・ファイアー」ではブランドンの役の青年が、
天安門事件で死んだ自身の父を語る上で以下の台詞を言う。
「私の父は何の理由もなく死んだ」
いったいこの「死」に対する符合の数々は・・・。
才能のある若い人間が逝ってしまうのは非常に残念、ブランドンの冥福を祈る。
(1994・1001の日記を元に再構成、2003・0731)
参考:宝島社「地獄のハリウッド」内、江戸木純「シネマの決死圈」
(註1)実際「2」は製作された。
関連記事:『ブルース・リー「死亡遊戯」と「G.O.D 死亡的遊戯」
そしてケイブンシャ発行の「死亡遊戯」ノベライズ』はこちら
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