昭和36年東宝
原作:村上元三
監督:稲垣浩
音楽:伊福部昭
出演:三船敏郎、平田昭彦、岩井半四郎、志村喬、市川団子、山田五十鈴、久我美子、香川京子
<あらすじ>太閤秀吉の死後、勢力を拡大する徳川家の包囲網に決戦の兆しを見せる豊臣家。
関が原の合戦で一家離散し一旗上げようと大阪にやって来た茂兵衛(三船)は
ある人物の依頼を受けて大坂城に進入し
徳川秀忠の娘千姫(星由里子)を連れ出そうとするが失敗する。
自分の使命に一途な阿伊(香川)の心に打たれた茂兵衛は
商人の裏切りにより徳川方に流れるはずだった鉄砲と火薬を奪還し
大坂城内へ運び込むため決死の行軍を進める。
08年3月16日の第二回伊福部昭音楽祭で見る(DVD映像)。
大坂城のセット、城内の絢爛豪華な部屋、騎馬武者の人数の多さと、
舞台で紹介した東宝のプロデューサーの方がおっしゃっていたように
相当な人数と金がかかってるなあ、といった豪華な映画。
ストーリーは大坂冬の陣をモチーフに、三船を主人公にしながらも
戦局に翻弄される群像を描くといったもので割りと複雑。
映像には「大御所」徳川家康は一度も登場しないが
それがかえって豊臣側を舞台として進行するこの作品内での、
悪役の大将って感じ‐徳川側の圧力‐を醸し出している。
大坂に出てきた茂兵衛が城下町で大暴れし、
橋の上で山伏集団(親分は田崎潤)に縄で吊るされていたところを
通りがかった忍者・霧隠才蔵(市川団子=3代目市川猿ノ助)に縄を刀で切られ、川に転落したところを船を出した阿伊に救われる。
茂兵衛は豊臣秀吉に可愛がってもらった商人の伊丹屋道幾(香川良介)、
加藤清正の娘で目が不自由な姫・小笛(久我)らの要求により千姫奪取の任を引き受けるが
土壇場で引き換えに案内役の美しい阿伊の体を要求する。
しかし、大意のためならと目をつぶって身をゆだねる阿伊の気概に負け、大坂城につながる隠れ道を進んでゆく。
この当たりの香川京子、色白で大きな目、高い鼻がとても美しい。気品漂う久我美子とはまた別な。
伊丹屋はそこは商人、ポルトガルから買った鉄砲や火薬が徳川、豊臣どちらに高く売れるか算段して
すかさず裏切って徳川方に売るという手に出る。
果ては阿伊を捕らえ、ポルトガル商人との商談の手土産にする。
茂兵衛は阿伊の一途さを忘れられなくなったか、作戦失敗後も城下町をうろうろして阿伊と逢うきっかけを狙っていたが
才蔵の情報により阿伊がポルトガル船に運ばれたことを知り彼女を奪還するため二人は人夫になりすまして船に乗り込む。
この船の中の日本人側通訳の役が天本英世。
和洋折衷の奇っ怪なドレスアップと身振り手振りを交えた通訳がドクター・フー的な怪しいテイストを醸し出している(笑)。
茂兵衛と才蔵は乱戦の末阿伊を奪還して船を脱出、才蔵が目くらましの爆弾を投げる時の「エイ!」という掛け声が時代掛ってていい味。
伊丹屋へ何やら相談に行った小笛の危機を感じた茂兵衛と、
茂兵衛と乳兄弟だった豊臣方の薄田隼人正(平田)は馬で近江屋に駆けつける。
しかし小笛は近江屋の裏切りにすでに気づいていて、ピストルを持った近江屋と対峙する。
小笛、短刀を投げつけて近江屋を成敗、目が不自由なのに一撃で決める見事な技!
ピストル持っていても瀬戸物壊すしか出来なかった近江屋とは偉い違い(笑)。
才蔵は和平交渉に出向く小笛に従い、茂兵衛は近江屋から奪った鉄砲と火薬を大坂城に運ぶべく牛馬と人夫を従えて決死の行軍。
ところが行く先々はすでに徳川方の軍勢が大坂城に向かっていく途中、敵だらけ。
茂兵衛は度胸と機知で徳川方の軍勢を丸め込み、うまく大坂城に近づいてゆく。
この辺は豪快さとユーモアを織り交ぜた三船の独壇場、笑える笑える。
敵陣の真っ只中に入ってしまって突っ切るのみ、となった時牛から馬に車を替えて、城門まで突進!
BGMのマーチと共に迫力あるシーン。
無事薄田の元へ鉄砲・火薬を運びこんだ茂兵衛だったが、火薬を積んだ大八車が一台橋の上で動かなくなってしまった。
敵の手に渡るならいっそ、とばかりに人夫とともに寝転がって松明のリレーで見事火薬を爆発させる茂兵衛、痛快!
その後いくさは和議となる。
茂兵衛は橋での活躍が認められ薄田から「直参、二十石」のお墨付きをもらうが
その石の低さにがっかりした様子。
この辺、何だか現代の企業戦士にも通じる印象。
茂兵衛は橋の上で阿伊と再会し、「俺には侍は合わねえや」のセリフと共にお墨付きを川に捨てる。
そして茂兵衛と阿伊は結ばれ、茂兵衛の生まれ故郷へと旅立ってゆく。
破天荒な活躍が持ち味の茂兵衛を重用しなかった官僚組織、という見方が的確かどうかはわからない。
しっかし目前の危機を持ち前のバイタリティとアドリブで乗り越えていく三船の茂兵衛はとても魅力的で、
とても「侍は合わない」とは思えませんです。
【ネタバレ:笑っちゃう三船のセリフ】
*千姫奪取の目的で大坂城に潜入した茂兵衛が霧隠才蔵と再会し、それと気付かず揉み合いになるシーン。
才蔵「おぬしは伊賀者か、甲賀者か」
茂兵衛「俺は・・・ただ者だ!」
そのほかにも笑えるセリフ多し。
それから物語中盤で茂兵衛が阿伊を探すため居候する城下町の武器屋の主人(上田吉二郎)も、茂兵衛との掛け合いなどでいい味出してる。
(08.0329)
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