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1964(昭和39)年東映(モノクロ)
監督:深作欣二
脚本:黒澤明、谷口千吉
音楽:佐藤勝
出演:配役
高倉健:鉄(九兵衛の息子)
丹波哲郎:ジャコ万(片目のマタギ)
山形勲:九兵衛 (ニシン漁の番屋)
浦辺粂子:タカ(九兵衛の妻)
南田洋子:マサ(九兵衛の長女、鉄の姉)
大坂志郎:宗太郎(マサの夫)
高千穂ひづる:ユキ(ジャコ万に横恋慕の女)
江原真二郎:大阪(大阪弁の出稼ぎ漁夫)
'11年1月22日、浅草で見る。
東宝版は三船敏郎vs金田龍之介だったが、この東映版は高倉健vs丹波哲郎。
で監督が深作欣二、音楽が佐藤勝という別な意味で豪華版。
比較するといろんな差異が見られて面白い。
ストーリー展開や状況説明が東映版の方がわかりやすい。
オープニングは雪の中走る機関車、降りてくる出稼ぎの人の群れ。
ジャコ万は本名「まんきち」らしい。九兵衛の妻タカが「まんきちさん」と呼ぶシーンがある。
職業は白クマを狙う密猟マタギ。狙った白クマは一頭も逃さなかったそう。これはジャコ万を追う女ユキの証言。
ってことはジャコ万はシベリアとかまで遠征して白クマ狙ってた、ってことになる。
まあジャコ万は樺太帰りですから海を渡ってシベリアにまで遠征していた、ということも考えられますが
ヒグマを誇張して白クマ、って設定にしたのかも知れません。
ジャコ万のあだ名の「ジャコ」は「ジャコウジカ」のことだそうで、
「ジャコウジカのようにすばしっこい」からだそう。小魚のジャコじゃなかったんですね。
でも調べてみると「ジャコウジカ」ってインドとかの南アジアに生息してるらしいから地理的に疑問。
ジャコ万がジャコウジカ狩りにインドまで行ったのか?
ジャコウジカを見たことある人がジャコ万の動きを見て名付けた、って感じでしょうか?
もしジャコ万がジャコウジカ狩りに本当にインド周辺まで行っていたとしたら
北はシベリア、西はインドという行動範囲の広い国際的密猟者ってことになる(笑)。
まあジャコウジカも名前のようにジャコウが取れるので高く売れるでしょうから、確かに密猟者には持って来いの獲物でしょう。
ヤン衆(出稼ぎ漁夫)の宿舎で暴れてヤン衆をちぎっては投げ殴っては投げの丹波はすごく大きく見える。
「大学」が「大阪」になっている。この人物は東宝版でも最後まで本名不明の男なのだが、
東映版では大阪弁をしゃべり、より病弱な様相。
また自分の過去をジャコ万に語るシーンがある。それによると惚れた女を殺して転々としてきたそう。
ストーリーの進行とともに大阪はどんどん頬がこけていってもろ病人、って顔になる。
大阪は眠れない。罪の悪夢を見るためか。
眠れない夜大阪は、一人で炉端で酒を飲んでいるジャコ万に復讐を思い止まらせるように説得するが
ジャコ万は耳を傾けない。しかしジャコ万は大阪のために酒瓶を置いていく。
クライマックスで九兵衛を妨害するジャコ万に、大阪は直接「復讐からは何も生まれない」ことを諭す。
ここがまあ「日本の食糧事情のため」と言って漁場に向かう東宝版の大学とはちょっと違う。
若々しい健さんはカッコイイ!
背が高く背筋がピンと伸びて、都会的な雰囲気。
野性的な東宝版三船とは対照的。
宴会での南の島の踊りのシーンは健さんもやる。
ステップと手の振りが効いててすっごくユーモラス。
三船もそうだけどここは大スターが面白い踊りをやるシーンとして貴重。
またこの宴会では東宝版では出なかった「ソーラン節」が歌われる。
それから鉄とジャコ万の格闘シーンだけど、何か殺陣とか間合いがしっかりしているような感じで
まあ健さんがボクシング経験者だからかも知れませんが格闘技っぽい。
この辺は時代劇やヤクザ映画などで東映が発達しているのかもしれない。
深作欣二監督というところもあるのかも知れません。
鉄が土曜の夜から馬が引くソリに乗って向かうのは教会じゃなくって
船の沈没で亡くなった友人の父と妹が開墾している牧場みたいな場所。
はじめに友人の写真を届け、開墾を手伝う。友人の父親と切株を汗流して引き抜く。
時々通っていたらしい、ラストにも行くがそこでは耕運機が動いていて、妹のフィアンセ?が運転していた。
ほんのり残念感持ちながら港を目指す鉄。
まあだけど大阪が最後まで本名不明ってのは考えてみればヘン(墓標にも「通称 大阪の墓」と書かれる)。
ヤン衆への支払いの時一人ひとり名前を呼んで現金の入った封筒渡していたいたから、
名簿の台帳みたいのがあるはずで、名字・下の名前で記入してるはず。
そういったところを含めた東宝版と東映版の差異や謎はもはや原作を調べないとわからないでしょうね。
ということで今後の課題です。
それから原作は本来「鰊漁場」というタイトルでしたが、東宝版のヒットにより映画と同じタイトルに改題したそうです。
映画は東映版の方が時代が後のせいもあってか洗練されているような感じで、
まあ後発の強みといいますか当然東宝版を研究していると考えられますので、
先にも述べましたわかりやすいという点が大きいです。
(2011.0123)
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