EL&Pの「タルカス」オーケストラ版
吉松隆監修・東京フィル演奏
「新・音楽による未来遺産」より
100314 東京オペラシティコンサートホール


↑ホール入り口前。

10年3月14日、初台の東京オペラシティコンサートホールにて。
目当ては勿論「タルカス」オーケストラ版。

入場するとロビーに「キース・エマーソン氏からのメッセージ」が展示されていた。
これはあとで作曲家吉松隆氏が舞台上で読みあげた。



ホール内は鮮やかな木造。入ると木のにおいが心地よい。
天窓からの採光が木の茶色を美しく照らす。いい雰囲気。


「タルカス」はメイン・4番目に演奏されたが、
オリジナル版に割と忠実で、スピード感を失うことのなしに
また「ピコピコ」もどのように再現されてるかはわからなかったが聞こえて
なかなか面白かった。

抒情的なパートはさすがにオーケストラの深みある出来。
ドラも鳴って迫力。
エキサイティングな約20分でした。
ただキーボードソロの始まりとヴォーカルの部分が少しインパクト薄かったのが残念。
まあその辺は初演ってこともあるし。でも素晴らしかったです!

ただ会場には、いっつもクラシック聞いてそうな老夫婦などが多く
そういう方たちには原曲わからないで聞くのはツラかったかも。
途中で声出してる年配の客もいたけど、何か不満だったのか。

それはともかく、この日「タルカス」はクラシック、ロックを超越した音楽史上に残る名作として記憶されたに違いない。
プログレッシブ・ロックの名曲「タルカス」がオーケストラ演奏で新たな命を吹き込まれたとしたら、

ロック⇔クラシック(オーケストラ)

それはムソルグスキーの「展覧会の絵」と真逆の進化を遂げたと言えるだろう。
勿論その媒体となったのがEL&Pであり、とりわけキース・エマーソンの功績が大きいことには誰も反論の余地はないはずだ。
コンサートのタイトルにふさわしい結実に脱帽。



「タルカス」は1971年5月に発表されたイギリスのプログレッシブ・バンド
「エマーソン、レイク&パーマー」のセカンド・アルバム。
またはそのアルバムに収録されている組曲、その主題となる怪獣の名前。
ジャケットに描かれているタルカスは戦車の上にアルマジロが鎮座したような姿。



タルカスが火山の中から誕生し、地上のすべてを破壊し尽くし、
その後マンティコアという怪獣と遭遇し海に帰っていくというストーリー。

ジャケットを開くとタルカスの誕生、非力そうな前座怪獣を蹴散らして
マンティコアとの対決を経て海に帰るまでのイラストが描かれている。

ライナー・ノーツではタルカスがマンティコアをめちゃめちゃに粉砕し、海に帰ると説明されているが、
ジャケットのイラストではマンティコアのサソリのような尾がタルカスの眼を攻撃しているシーンがあり、
もしかしたら負けたのはタルカスの方?のような気もする。
またはタルカスは勝利したが、マンティコアの尾により眼を負傷した、ぐらいかもしれない。
クライマックスの演奏「戦場」ではドラムスも刺激的なバトルシーンの描写の後
寂しげなパートになる。
破壊と常勝を続けてきた暴君タルカスの敗北を描いてるのかも。

マンティコアは紀元前より記述のある、アジアに棲むとされる想像上の怪獣で
その形態は「サソリの尾を持つ人面の獅子」といった風である。
マンティコアは人面であることから、怪獣タルカスを撃退する人類のイメージなのかも知れない。
そして撃退された(が生き残った)怪獣はゴジラ、あるいはタルカスと英国つながりの「ゴルゴ」らと同様に海に帰る。
しかし、いつまたタルカスが出現するかもしれない(ライナー・ノーツにも「タルカスの息子よ!」という発言がある)
と想起させるようにオープニングと同じ主題がラストでも演奏される。
この復活を予感させるようなラストは'71年の映画「ゴジラ対ヘドラ」のラストシーンとの共通性も感じさせる。

ところで。
戦車の台座に生体が居座る怪獣と言えば'67(昭和42)年テレビ放送開始の「ウルトラセブン」の「恐竜戦車」。
名前のまんまの姿です(笑)。しかしてそのパワーは絶大で、ウルトラセブンも大苦戦。
こちらの方がタルカスより4年ほど出現が早いが、因果関係はあったのか。
それともいわゆる収斂進化か。

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【その他】
トークの中で作曲家が、コンサート1か月前の時点でキース・エマーソンに
オーケストラ編曲の許可を取っていなかったことを告白(笑)。
もし許可が降りなかったらコンサート中止?どうなっていたのでしょう(笑)。
またコンサート1か月前で切符が100枚しか売れていなかったとも。
営業の方たちが頑張ったのでしょうか、会場は7割の入りでした。営業の方、ご苦労様でした。

あそれから売店のCD売り場では吉松隆作品や東京フィルのCDは売ってましたが、
さすがにエマーソン、レイク&パーマーのCDは売ってませんでしたね!
タルカスの原曲、売ればよかったのに、と思う。

3.の黛敏郎のBUGAKUは
ヴァイオリンを指で弾いたりして和楽器の雰囲気を醸し出す。
しかしてその重低音、無秩序性による盛り上がりはピンク・フロイドの「アトム・ハート・マザー」を想起させ
「和製原子心母」といった趣。
もっとも発表は「BUGAKU」の方が古いので
「BUGAKU」のアイディアの何らかがピンク・フロイドのメンバーを着目させた可能性も。
直接「BUGAKU」とは関係ありませんが
「アトム・ハート・マザー」は中間部で「また来た、ほっほほ、はあ〜」って日本語のように聞こえるコーラスがある(空耳アワー?)。



2010年3月14日(日)
東京オペラシティコンサートホール(初台)
「新・音楽による未来遺産」

ピアノ:中野翔太 
演奏:東京フィル 
指揮:藤岡幸夫
監修:吉松隆

1.アトム・ハーツ・クラブ組曲第1番:吉松隆
弦楽オーケストラによるROCK組曲
 1.プログレ風アレグロ
 2.バラード風アンダンテ
 3.コキュ(間男)風のスケルツォ
 4.スラップスティック風ブギウギ


2.アメリカ Remix:ドヴォルザーク(吉松隆:編)初演
〜弦楽四重奏曲「アメリカ」によるピアノとオーケストラのための
 第1楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ
 第2楽章:レント
 第3楽章:モルト・ヴィヴァーチェ
 第4楽章:ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ


(15分休憩)

3.BUGAKU: 黛敏郎(1962)
 第1部:レント
 第2部:モデラート


4.タルカス(オーケストラ版):キース・エマーソン(吉松隆:編)初演
 噴火
 ストーンズ・オブ・イヤーズ
 アイコノクラスト
 ミサ
 マンティコア
 戦場
 アクアタルカス


*アンコールはなし、全約2時間。


(10.0314)

参考:EL&P「タルカス」
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↑EL&P版。

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