ほたるの作り方 (其の弐・造型)


[モデリング] [ボーン] [サーフェイス] [レンダリング]

[モデリング]

 「ほたる」では、今更ですが自らセルシェーダーを用いた作品を作ってみたかった、というのが
制作動機の一つでしたので、デザイン/モデリング段階からセルシェーディングを行なう事を前提として
作業を開始しました。

hotaru modeler screenshot

 キャラクターでは、陰のラインをシッカリと出す為に、胸やお尻は大きめにハッキリと、服のシワも
深く強めに作成しました。
 モデラー上では頭の大きさや位置等バランスが良くないですが、この辺の微調整はカメラ視点で見ながら
レイアウト上で行ないます。

hotaru's fighter screenshot

 メカ関連では、平面が多いと、綺麗な陰のラインを出すのが難しい、陰影の変化が急激に起こり易く、
動画にした場合に色がパカついて見える原因になる、などの理由から、曲面を主体としたデザインにしました。

hotaru weightmap

 「蛍」には、指とパンツにだけWeightMapを作成しました。WeightMapを増やし過ぎるとレイアウト作業が
重くなるから、と思い、必要最小限に留めたのですが、実際には余程の量でもない限り今時のパソコンでは
大した問題は無いみたいでした。(「ほたる」の実作業には、Athlon 1〜1.4GHz/RAM 1〜1.5GBの
自作PC数台を主に使用しました)

 指先のWeightは隣の指にBoneの影響を及ぼさない為に、パンツのWeightは足を動かした時に
股間に出来るシワがキッチリとY字型に出る様にする為に設定しました。

hotaru's crotch

 股間のシワは、ちゃんと発生しなかったり、T字型に出来たりすると、キャラが妙にドン臭く見えてしまうので、
実はかなりこだわりました。実際にはアクションシーン自体が本編から殆ど無くなってしまったので、
折角こだわった「蛍」の股間の出番は余り有りませんでしたが。

[ボーン]

hotaru bones setup

hotaru arm bone

 「蛍」と「オヤジ」には、全身で90本程のBoneを使用しています。どちらも単純なキャラですが、
指先にまでBoneを仕込んでいるので少々多めです。「手の表情」は、キャラクターをイキイキと見せる為にも
非常に重要だと思いますので、これは省略出来ません。本編中でも「手の演技」にはそれなりに
こだわっている積りです。反面、制作時間の都合等で顔の表情変化のほうが乏しくなり、中途半端な結果に
なってしまいました。

 体全体のBoneは、解剖学に沿って仕込んだところで必ずしも綺麗には曲がってくれないので、
そういう意味ではかなりいい加減に組んであります。Bone毎に細かくWeightMapを作っていくのもイヤですし。
基本的には、BoneのRest Lengthを若干短めにしておく(普通に仕込んだ後、曲がり具合を見ながら
長さを調節する)
と良い具合に曲がってくれる事が多いみたいです。

 胸も、揺らす必要が発生した場合に備えて、Boneを仕込んで置きます。

hotaru schematic view

 Schematic Viewも、各種アイテムの位置が判り易い様に配置・色分けして並べて置くと
アイテムのセレクトなどに便利です。キーフレームを作成したオブジェクトには特定の色を付ける様にすると、
モーションが複雑になってきた場合にも多少作業し易くなります。
 「蛍」の場合、動かす可能性があるBoneが赤色、が基本となっています。

[サーフェイス]

hotaru color sample

 セルシェーディングは、基本的に全てunRealを使用しています。陰の色は黒ずんで汚い色にならない様に、
かといって全体に彩度が高過ぎてバリバリにデジタル臭くもならない様に、注意深く時間を掛けて
設定しました(色彩感覚のダメっぷりにはかなり自信があるほうですので、昔から…)
 例えば蛍の場合、シャツの陰色には青を、パンツの陰色には赤を微妙に加算する、といった感じです。また、
顔には陰が出過ぎると不気味になるけど、腕などにはキッチリと立体感が欲しい、といった場合などは、
同じ色でもサーフェイスを分けてパラメータを調節し、陰の出方などに微妙な変化を付けています。

hotaru color compare

 上図は初期と最終の蛍の画像です。初期のものはモデリングが途中だったり、設定されていない
サーフェイスが残っていたりもしていますが、色設定の違いで印象が結構変わっているのが判ると思います。

 3DCGをセル画っぽく見せる、という事に関しては、造型や動きの付け方も然る事ながら、
「使用する色の選択」も非常に重要な要素だと思います。

bumpmap compare

bumpmap panel screenshot

 エリア毎のボケは、(其の壱・爆発)の中に書いた様な理由から設定していませんが、一部の金属類等は、
ボケを大きめに設定しています。そのままだと、(今回に関しては)グラデーションが滑らか過ぎてイヤなので、
FractalNoiseを使用してヘアライン調の細かなBumpマッピングを加え、階調変化を多少ノイズっぽくしています。

[レンダリング]

 エッジのラインはLightWaveの機能を使用し、レンダリング解像度720*486pixelに対して
0.5pixelの太さに設定しました。

 最終レンダリングは、Enhanced Low以上の設定で行ないます。エッジ抽出を行なうアンチエイリアスは、
例えHighに設定しても細いラインの途切れ等が解消されませんし、静止画の場合は兎も角として、
動画にした際は細かなテクスチャのチラツキの原因にもなります。
 元々、セルシェーダーを使用すると基本的にレンダリングが軽くなりますので、「ほたる」では
殆どをEnhanced Highでレンダリングしました。

注) CG carnival 2002で上映、ComputerGraphicsWorld誌2002年8月号付録DVDに収録されたものは、
古いバージョンの為、Enhanced Lowでのレンダリングです。

rend high aa

rend enhanced high aa

  上二つのサンプルを比べると、Highのほうの線は途切れがちなのが判ると思います。特に、口や顎、
ゴーグルの辺りが顕著です。

 モデリングからテクスチャ設定に関しては大体こんなところですが、基本的な内容ばかりで、結局
何も特殊な事はやってない、って感じですね…。



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