No.155
ベルリンの壁崩壊!新日本対全日本対抗戦
新日本プロレス「’90スーパーファイト IN 闘強導夢」
新日本プロレス「’90スーパーファイト IN 闘強導夢」
1990(平成2)年2月10日 東京ドーム
同行者=千里眼(他にいたかもしれない)
当初WCWからリック・フレアー、グレート・ムタら主力が参戦しての大会になるはずだったが
同年4月に予定されていたWWFとの合同興行に新日本が協力することを知ったWCWが選手の派遣をストップ。
坂口社長は全日本のジャイアント馬場社長に会談を求め、全日本選手の参加が決定。
当時「ベルリンの壁崩壊」と報道され、新日本対全日本の対抗戦が実現するという歴史的イベントとなった。
試合始まるまでオーロラヴィジョンで「世界最強タッグ戦」猪木・坂口対ルー・テーズ、カール・ゴッチ戦が上映された。
いやー、面白い。ルー・テーズの寝技を堪能した。
坂口はこの試合グランドになるとぶり、じゃなかったマグロ状態。
【第4、5試合】に出場のソ連勢は1年前の勢いが嘘のような凋落振りで連敗。
この後新日本への登場はなかった。
しかしこの1年のソ連勢のプロレス出場はこの巨大な元共産圏国が
プロ格闘技で通用するレスラー、サンビスト、柔道家の宝庫であると認識せらしめ
(オリンピックなどであれだけの実績を誇っていたのだから当然といえば当然だが)
のちのリングスなどの先鞭をつけたという点で評価されていいだろう。
【第6試合】、
出す技といえば急所攻撃ぐらいでのらりくらりの試合を進める王者ズビスコを電光石火のピンフォールで仕留めて、
マサ斉藤が日本人二人目のAWA世界王座を奪取。
これは予想していなかった結末だけに自分の中では盛り上がった。
斉藤はこの後国内でビガロ相手に初防衛を達成した後(註1)、ミネソタでズビスコにベルトを奪回される(註2)。
【第7試合】は異常な興奮の中、鶴田コールでジャンボが初の新日本マットに登場。
木戸との対戦はテーズとゴッチの関係からの観点もさることながら
日本人としては超ヘビー級の体格の鶴田に、一度はUWFの頂点を制した木戸のサブミッション・テクニックが通じるかという興味もわいた。
試合は鶴田が新日本の二人を圧倒。
必殺バックドロップは木村に見舞ったやや軽めの1発だけで、テーズ式のフライング・ボディシザースドロップで木戸にフォール勝ち。
しかし木戸の脇固めは確かに一度は鶴田の動きを止めた。
木村もゴング前の奇襲で鶴田に稲妻を炸裂させ大舞台で派手に立ち回った。
試合後は鶴田にマイクで再戦を要求する張り切りよう。
谷津は・・・谷津はあまり記憶にない・・・。
【第8試合】、天龍&タイガーマスク(三沢)の越境龍虎コンビが登場。
ジャパンの全日本登場時以来の長州対天龍が実現。
天龍は花道真ん中のお立ち台(註3)を無視。
専門誌の記事だと長州、天龍各チームのパートナーはそれぞれ小林邦明、川田利明だったらしいが
長州が試合の攪乱を目論んだか動きの変則な高野を指名すると全日本側もタイガーの登場。
試合はやはり乱戦となったが場外戦から生還したタイガーがリングアウト勝ち。
【第9試合】、ハンセン対ベイダーの外国人頂上対決。
約8年ぶりの新日本登場、スタン・ハンセンは花道でブルロープを振り回しての入場。
ベイダーは例の甲冑をかぶっての入場、お立ち台では白煙噴出のセレモニー。
試合序盤、グランドで脇固めの体勢でハンセンを攻め込んでいたベイダーが立ち上がり、
なぜか苦しそうな表情を見せ突如自らの手で覆面をはずした。
オーロラ・ビジョンにベイダーの顔が映ると場内にどよめきが上がった。
ベイダーの右目は腫れ上がって見えない状態になっていった。
専門誌によると開始直後の殴り合いでハンセンのヒジが当たったらしい(註4)。
しかし試合は続行された(この辺がプロレスのプロレスたるところだ)。
ベイダーは右目が見えないハンデを感じさせずハンセンと戦う、すごいガッツだ。
コーナー最上段からのベイダー・アタック、エルボー攻撃、最初のラリアット。
ハンセンが左腕を高々と誇示してヒジの黒いサポーターを引っ張る。
予告ラリアットだ。
しかしハンセンが突進したところを、ベイダーが重爆ドロップキックで迎撃。
ベイダーがハンセンをロープに振ろうとするとハンセンが抵抗。
するとベイダー、ハンセンのわき腹に強烈なパンチ一発!
「ぐううぅぅぅぅぅ」って感じでロープ際で崩れ落ちるハンセン、
ベイダーはオープンフィンガー風のグローブを着用していたがこのパンチは物すごく痛そう。
ベイダーこの後ロープワークからハンセンのラリアットをかわして逆にラリアット。
ハンセンも負けずに予告なしの元祖ラリアット炸裂、その後戦場は場外へ移り両者リングアウト。
ド迫力の対決に満足。決着はつかなかったがそういう試合があってもよいと思った。
この日ばかりは不透明決着?に感謝。
大舞台ですごい試合を見せてくれた両者、特にアクシデントがあったにもかかわらず
最後まで試合を成立させたベイダーを賞賛。
こんなに御馳走みたいな試合を連続で見せられると、この後の選手は荷が重いっていうのはあるだろう。
そういう意味では元横綱双羽黒の北尾光司のデビュー戦が【セミファイナル】っていうのは何だか。
後から考えるとデビュー戦がセミファイナルっていう仕掛けは一般マスコミのための戦略だったのかも知れない。
メッシュの入った頭髪、映画「ターミネーター」の殺人マシンを連想させる革ジャン、サングラスという
新人らしからぬ派手ないでたちで登場の北尾に早くもブーイングが混ざった歓声。
対戦相手のビガロはよくわかったもので、選手コールの時相撲の四股を踏むパフォーマンス。
北尾はコールと同時に、着ていた黄色いタンクトップを引きちぎるハルク・ホーガンの物まねを披露
(黄色主体の試合コスチュームがそもそもホーガンかなり入ってる)。
ゴングが鳴って試合開始、北尾は自分から出て行かず両手を前に出して大上段にかざす大きな構えでビガロに「来い!」と挑発。
「それはちがうだろう、新人なんだから北尾から行かなきゃ」自分思いました。
北尾アームホイップ、ボディスラムと攻撃、この辺はまあまあ。
ミドルキックは直進しての右の連発と単純、ラリアットは手の動きが先行して迫力不足。まあこの日デビュー戦の新人だから仕方ない。
中盤ビガロのヘッドロック、スリーパー、場外戦で消耗した北尾は早くも失速。
何とかバックフリップでビガロを寝かすとギロチンドロップ狙いで(この辺もホーガンかなり入ってる)ロープに走る。
だが寝ているビガロに対してのロープに走る方向を間違え三角飛び、じゃない三角走り。観客失笑。
ようやくどっすん、とギロチンが決まりビガロから3カウント。
勝ち誇る北尾、コーナーに上がって勝利をアピールするも客席からはかったるい試合内容(この日デビュー戦の新人だから仕方ない)にブーイング。
日本プロレス界に天然ヒールとしての第一歩を残す。
試合順としてはソ連軍の試合とマサ斉藤のタイトル戦の間ぐらいがよかったのでは。
【メインエベント】
猪木・坂口の黄金コンビ復活!
しかしながら試合の流れは終始若い二人が握っていたよう。
猪木はゴング前プラチナのガウンを着たまま蝶野に延髄斬りの奇襲。
橋本の重爆キックは容赦なくベテランコンビを蹴撃。
蝶野はレフェリー元祖鉄人の前でバックドロップ、STFを披露。
猪木が卍固めを掛けると橋本がカット、その後蝶野も猪木に卍。
しかし最後は唐突に猪木の延髄斬りが決まって黄金コンビのフォール勝ち。
試合終了後は猪木が「1、2、3、ダーッ」で締めくくり。
あとでテレビ放送のビデオ見たらこの試合ですね、猪木が試合前のインタビューで
「やるまえから負けること考えるバカいるかよ」とか言ってインタビュアーを引っぱたいたのは。
(2004.0822)
註1:平成2年3月22日、名古屋・愛知県体育館。○斉藤(体固め、12:33)C.B.ビガロ●
註2:平成2年4月8日、ミネソタ州セントポール・シビックセンター。●斉藤(体固め、17:05)L.ズビスコ○
註3:当時のドーム大会では入場の花道が、現在のようなステージからの一本道で敵も味方も同じ道を歩いてくるスタイルは確立されておらず、
赤コーナー、青コーナーそれぞれの選手が別々にそれぞれの控室から入場していた。この大会ではそれぞれの花道の真ん中あたりに
進路に合わせて「お立ち台」が設置されていた。
註4:のちに専門誌か何かで読んだところ、眼底骨折だかの重傷だったらしい。
1990(平成2)年2月10日 東京ドーム 新日本プロレス「’90スーパーファイト IN 闘強導夢」
観衆6万3900人(超満員札止め)
1.30分1本勝負
○飯塚孝之(ブリザード固め、10:49)松田納●
2.30分1本勝負
○佐野直喜、ペガサス・キッド(猛虎原爆固め、16:57)獣神ライガー、野上彰●
3.30分1本勝負
○後藤達俊、ヒロ斉藤、保永昇男
(片エビ固め、13:29)馳浩、小林邦昭、星野勘太郎●
4.45分1本勝負
○ブラッド・レイガンス(回転首固め、6:13)ビクトル・ザンギエフ●
5.45分1本勝負
○スティーブ・ウィリアムス(片エビ固め、9:00)サルマン・ハシミコフ●
6.AWA世界ヘビー級選手権(60分1本勝負)
○マサ斉藤(首固め、14:29)ラリー・ズビスコ●
*斉藤が第40代王者になる。
7.60分1本勝負
○ジャンボ鶴田、谷津嘉章(体固め、15:06)木村健悟、木戸修●
8.60分1本勝負
○タイガーマスク、天龍源一郎(リングアウト、18:59)長州力、ジョージ高野●
9.IWGPヘビー級選手権(60分1本勝負)
▲ビッグ・バン・ベイダー(両者リングアウト、15:47)スタン・ハンセン▲
*ベイダーが3度目の防衛に成功。
10.60分1本勝負
○北尾光司(体固め、9:58)クラッシャー・バンバン・ビガロ●
11.60分1本勝負
○アントニオ猪木、坂口征二(体固め、15:43)橋本真也、蝶野正洋●
*特別レフェリー、ルー・テーズ。
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