ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒 デジタル・リマスター版 [DVD] 新品価格 |
1999年大映
監督:金子修介
特撮監督:樋口真嗣
音楽:大谷幸
主題歌:ユリアーナ・シャノー
出演:中山忍、前田愛、藤谷文子、蛍雪次郎
<あらすじ>
レギオン撃退でマナ(地球に存在するとされる超自然的な力)を大量消費したためか地球環境に異変が生じ世界各地でギャオスが大量発生。
また奈良でもギャオスの変異体?と称される巨大生物が出現。
ガメラは渋谷駅前でギャオスを撃退するものの多くの死傷者を出す。
両親がガメラの巻き添えになって死んだ比良坂綾奈(前田愛)の怨念のエネルギーを取り込んだ
ギャオス変異体(イリス)とガメラが登場人物のさまざまな思惑を含んで京都で対峙。
「G3」とも呼ばれる平成ガメラシリーズ第3弾。
ガメラのデザインが前作にましてより鋭角化。
頭部のトサカ状の隆起、あごの下、甲羅の先端、手の周辺などにギザギザとした突起が多くなり頭部がより小さくなっている。
渋谷のシーンはともすれば悪魔的、圧倒的な恐怖感を持って登場。
「G1(平成第1作「ガメラ 大怪獣空中決戦」)」の頭でっかちの、ちょっと優しそうな印象はまるでなくもはや別の個体といった感じ。
これもG1→G2(平成第2作「ガメラ2 レギオン襲来」)でも見られた覚醒後の超進化によるものか。
オープニングで登場する沖ノ鳥島付近の海底の「ガメラの墓場」、
あれは「新世紀エヴァンゲリオン」での「零号機の墓場」とそっくり(これは後である仮説につながってゆく)。
累々と並ぶ巨大な亡骸・・・。
初めにギャオスありき。
平成ガメラシリーズ(平成3部作)はギャオスの存在なくしては語れない。
G3での実際の出番は南太平洋の島での、群がる蝿もリアルな幼体の死体、
そして渋谷の対ガメラ戦、ラストの大群襲来と少ないが
ガメラとの対立の理由(推測)、あるいは大量発生による人類滅亡の恐怖感(報道が続く)が連続して説明されるため
あまり絵として登場しなくても作品中に常にギャオスの恐怖が内在している。
「ゴジラvsビオランテ」の抗核バクテリアがこれに似ていて生成から武器使用、効果の確認と作品の中心的存在であるため
「バイオテクノロジー」というテーマを常に見ている人に意識させる
(逆に同じバイオテクノロジーで誕生した対戦怪獣ビオランテは特にストーリー展開上必要性を感じない)。
もちろんG1でのエピソードなしでは語ることが出来ないが、
脇役で出番が少ないのにストーリー展開上なくてはならない存在の怪獣(巨大なもの)というスタンスは
日本怪獣映画史上初ではないか。
平成3部作には一貫したコンセプトがある。
「ガメラ、ギャオスはどこから来たのか」「ガメラは何者なのか」「ガメラは人類の味方なのか」。
この謎を解き明かすようにストーリーは進んでいく構造になっている。
G1のラストに「もしギャオスが渡りをしていて、耐久卵が世界中にあったとしたら・・・」
というセリフがあるが、それが現実化したのがG3のストーリーだ。
G2は宇宙からの侵略者レギオンの生態の解明と対策が主軸の作品のため
ガメラの素性調べについてはあまり触れられていないが、
レギオンを倒すためにガメラが地球の「マナ」を大量消費したため地球の環境バランスが崩れて
G3のギャオス大量発生へと話はつながる。
3作はしっかりとしたストーリーで結びついている。
G1では「超古代文明人が遺伝子操作でギャオスを創造したが、ギャオスが人間を滅ぼす存在になりつつあったため
対抗手段としてガメラを創造した」と仮定されている。
G3では「12モンキーズ」のB.ピットのいかれた手の動きにも似たムーブのゲーム作家倉田(手塚とおる)が
「ガメラは器(うつわ)だ」と説明するシーンがある。
それは海底で発見されたガメラの墓場を知っての話なのは間違いないが、
ではガメラはどうやって造られたのか。
うつわ―ガメラは外殻が造られた後に、「マナ」と人間の魂が移植されて創造されるのではないだろうか。
エヴァンゲリオンの機体に操縦者の母親?の魂が入っているように。
・ ・
「たとえ一人でもガメラは闘います」G1で勾玉によりガメラと交信できる巫女と化した経験のある藤谷は、
G3のラストでガメラを「一人」と呼んだ。
もしかしたら彼女はうつわの中に存在する人間の魂を見つけていたのかも知れない。
うつわと人間の魂がシンクロして成功する確率は極めて少なく、数々の失敗の残骸が海底のガメラの墓場だったのではないか。
うつわは一回失敗したら二度と使えないのではないだろうか。そして捧げた人間の魂も消滅・・・。
平成ガメラシリーズに共通した世界観として「亀の存在しない世界」という約束があるらしいことを何かで読んだ(ネタ元不明)。
しかしG3で、電話する斉藤審議官(本田博太郎)の机の上には亀の置物が置いてある。
おそらくはこの世界では亀は恐竜などと共に既に絶滅した生物とされていたのではないか。
ならば机の上のマスコットが亀であっても不思議ではない。
あるいはガメラが創造された超古代文明の繁栄した時代には、恐竜も亀もまだ生存していたのかも。
もしかしたら恐竜ぐらい巨大な亀も存在していて、うつわはそういった生物をモチーフにして創られたのではないか。
ゲーム作家倉田は、京都駅に着いた長峰(中山忍)ら一行の前に姿を現し
「ギャオスは増大する地球人口の調節と腐敗した文明をリセット(リセットという比喩はいかにもゲーム作家という感じだ)する存在で
ガメラはそれに鉄槌を下す存在である」との説を述べる。
これは正しい推測だろう。
平成3部作に登場する怪獣は、ガメラ、ギャオス、レギオン、イリス。
宇宙から飛来したレギオンは置いておいて、残りの3怪獣。
3怪獣とも「超古代文明」が創造したとされる。
このうち「勾玉」で人間の少女(巫女)と交信できるのはガメラとイリス。
ギャオスは人類との交信はない。
「初めにギャオスありき」と書いたが、
ギャオスは失敗作なのかもしれない。
おいら切鮫の意見はこうだ。
超古代文明は、ある時期から2つの勢力に分かれた。
綾奈の疎開先の親類の学生・日野原繁樹(堀江慶)は守部家が代々眠りを守っている「柳星張(りゅうせいちょう)」の存在を明らかにする。
そして四方をつかさどる四神獣のうち、鳥的な「朱雀」と亀のような「玄武」は敵対する同士だと説明する。
その2つの勢力があったのだろう。
それはもしかしたら地球史上最初の宇宙からの侵略「レギオン」を撃退した後だったかもしれない。
ともかく2派は戦争を始める。
遺伝子操作で兵器としての巨大生物を創造する。
若い生娘と「勾玉」で交信しその感情をもエネルギーとする強大な生物兵器。
ところが最初に創造された「ギャオス」は「勾玉」で交信できない失敗作だった。
人間の意志が通じないギャオスはどんどん卵を生み増え始め、
やがてギャオス自身を創造した1派「朱雀=ギャオス派」を壊滅寸前に追い込む。
もう一方の派「玄武=ガメラ派」は「勾玉」で人と交信することを重視して、まずうつわを創り、
それにマナと「人間の魂」を入れることによって『若い生娘と「勾玉」で交信できる』ガメラを創造することに成功する。
「ガメラ創造」には多くの若者が名乗り出た。家族、恋人との悲しい別れ・・・。
しかしうつわとマナ、人間の魂がシンクロする確率は低く、失敗が続いた。
ようやく始めての成功が確認され、ガメラはギャオスを撃退したが、死滅したと思われていたギャオスは耐久卵を産んでいた。
ガメラは耐久卵が誕生した後のギャオスを駆逐するために眠りについた。
一方、壊滅寸前だった「朱雀派」の生き残りは、「玄武派」の「勾玉での交信」のテクノロジーを盗み出し(最古の産業スパイ!)、
創造のベースをコウモリあるいは翼竜としたギャオスから、貝をベースにして若い生娘と「勾玉」で交信できる「ギャオス変異体」を創りあげる。
そしてそれは完成したのだがその直後に「朱雀派」は完全に壊滅してしまった。
日本に流れ「柳星張」と呼ばれるようになったそれはのち「イリス」として覚醒する。
京都駅で綾奈の勾玉を手にしてイリスと対峙した浅倉美都(山咲千里)はギャオス派の末裔だったのか?
だが年を経てイリスと交信する術を失った彼女はあえなく瓦礫の下になる
(しかしガメラとイリスの戦闘で京都の街並みが燃えてしまったのを見て
「京都が・・・」と呻く浅倉からはまぎれもない大和民族の意識を感じる、美都→京都へ転化か)。
イリスが融合したがったのは現代の娘綾奈(前田愛)だった。
イリスは腹部の子宮のような器官に綾奈を取り込もうとする。
それは村人や
男を森に誘い込んでえっちをしようとした?キャンパーの女(仲間由紀恵!)を、
成長するための養分として吸収したのとは別個の動きである。
思うにイリスは綾奈(人間の魂)を取り込むことによって、うつわの状態からさらに進化した存在と成り
人間の魂を取り込んだガメラと同等或いは超越したパワーを持った生物兵器として完成するはずだったのかも知れない。
だがガメラがイリスと綾奈の融合を阻止したのは、そういったイリスの戦力アップを阻止するためだけの行動ではなく、
綾奈個人の存在を救う意味もあったのではないだろうか。
それはガメラの奥底にある「人間の魂」こそが為した行動だったのだろう。
「アンハッピーエンドなラスト」は巨大怪獣モノでは少ない方の部類だと思う、東宝他の「変身人間モノ」では多いが。
最初の、昭和29年の「ゴジラ」、「ゴジラ対へドラ」、東宝フランケンシュタイン2部作ぐらいか。
「ガメラ」では昭和旧作を含めてG3以外皆無でしょう。話は展開しているのに映画は終わってしまうG3。つまり未完である。
日本列島に集結するギャオスの大群相手に手負いのガメラは1匹で勝てるのか。
・ ・
藤谷の「たとえ一人でもガメラは闘います」というセリフと、
燃え上がる炎に囲まれながら、迫り来るギャオスの大群に対して威嚇の咆哮を上げるガメラのシーン。
人類は生き残れるのか?ガメラの運命は?
見る者にそれを委ねて平成3部作は終わる。
・・・でもこの余韻を持つラスト、おいらは大変気に入っている。
「ガメラ 大怪獣空中決戦」はこちら
「ガメラ2 レギオン襲来」はこちら
(1999.0313の日記を元に構成、2006.0923)
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