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<あらすじ>婚約者・夕子を訪ねて行ったまま消息が不明になった兄・和彦を探すため
車で婚約者の家・野々村家まで赴く圭子とボーイフレンドの浩。
だが婚約者は事故で亡くなっており兄の消息はつかめなかった。
謎を解くため再び野々村家へ来た圭子は、亡くなったはずの夕子の姿を目撃する。
東宝映画ですが未見でした。
'11年1月30日、渋谷のシネマヴェーラの特集で見る。
いやー、これは今まで見てなかったのが迂闊なぐらいの出来の、優れた和製ゴシック・ホラー映画ですね。
まずドッキリさせられる瞬間が5回ぐらいあり、
いずれもカットの早い切り替わりや画面の枠外から踊りこんでくる形なのでかなりショッキング。
小林夕岐子さんの幽霊(ストーリー上ホントは幽霊ではないのですが今は便宜上)
はビジュアル的にとても怖い出来になっています。
「怪獣総進撃」で見せた宇宙人にコントロールされる女性、
あるいはTV「ウルトラセブン」のアンドロイド役など
人形的、無機的な役が多い彼女がここではその特徴が存分に生かされています。
やや濃いめの青いドレス(ネグリジェ?)をまとい、長い髪でうつむいているそのたたずまいはまさに幽霊。
貞子や女優霊の先駆みたいな雰囲気のビジュアルです。
顔を上げたら眼が金色っていうのもおっかないし美しい。
でストーリーが展開するに従って役場の担当者、夕子の死亡診断書を書いた医師などが野々村家の災いについて語り出し、
呪われた家の様相が明らかになってくる。
野々村家はかつて何者かに襲撃されて志津と下男の源造を残して全員惨殺された。
夕子が生まれたのはそのあとだった。
和彦、圭子、浩が目撃した夕子の姿は幽霊ではなかった。
崖崩れに巻き込まれ瀕死の重傷を負った夕子は、しかし生きていた。
夕子は死の間際、催眠術をかけられたのだった。
すると驚くべきことに夕子はそのまま生き続けたが、
彼女は自我を失い母と源造以外を無差別に殺す殺人鬼へと変貌してしまった。
催眠術というのはそもそも暗示のうちのはずだから
「死なない」と暗示をかけられた夕子の精神が超自然的現象で肉体の崩壊をストップさせたのか。
しかしそれでは無差別殺人の動機が見つからない。
夕子にかけられた催眠術は「おまえは悪魔だ、悪魔は人間を殺し続けその魂を受け取り自分が生きる」だったのでは。
ともかく夕子は催眠術をかけた人物の首を切って殺す。
すると催眠術は解け、夕子も死ぬ。
唐突に物語は終焉を迎えラストは暗澹。見下ろすようなアングルが印象的。
松尾嘉代、中尾彬、いずれも若い。
松尾嘉代の膝上ミニスカートなんてなかなか見れないのでは。
高品格はコスチュームが殆ど「せむし男」的。
それから序盤だけ中村敦夫が出演していて、だけど後半は死体でしか登場しない。
随分豪華な使われ方だな、と思っていましたが
「血を吸う人形」の方が木枯らし紋次郎より古い作品なのでした。
負傷した夕子、内臓破裂と肩の骨がぐしゃぐしゃって言われていたのに
回想シーン?では全然ギプスとか包帯してない(笑)。例の青のドレスだけ。
ちなみにタイトルですが人形はちょっと出てきますがぜんぜん血は吸いません。
吸血鬼の類も出てきません。この映画ではだれも血を吸いません(笑)。
なのでこの後のシリーズ2作は岸田森の吸血鬼が出てきますが、
この第1作だけはシリーズとしては別の作品みたいな感じです。
屋敷の怪異も幽霊ではないので「幽霊屋敷」ではありません。
ということでこの映画のタイトルも、ちょっと内容とそぐわないようです。
ともかく野々村家の複雑な人間関係、
小林夕岐子さんの恐怖醸し出しっぷり、
監督のタイミングのいいショック描写などのいい要素が集合して
日本の土壌での洋館ホラーを完成させていて、
コワいのがい苦手な方はともかく一見の価値ある出来。
もう一度・・・小林夕岐子さんがコワいですよ・・・。
1970年東宝
製作:田中友幸、田中文雄
監督:山本迪夫
脚本:小川英 、長野洋
音楽:真鍋理一郎
出演:配役
松尾嘉代:佐川圭子(和彦の妹)
中尾彬:高木浩(圭子のボーイフレンド)
中村敦夫:佐川和彦(圭子の兄)
南風洋子:野々村志津(夕子の母)
小林夕岐子:野々村夕子(和彦の婚約者)
高品格:源造(野々村家の下男)
宇佐美淳也:山口(医師)
堺左千夫:運転手
(2011.0130)
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