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<あらすじ>海難事故の唯一の生存者は「フランケンシュタイン」と謎の言葉を残す。
かつて研究所でフランケンシュタインの怪物を研究していたスチュアート博士(ラス・タンブリン)は
「フランケンシュタインの怪物は富士山麓で死んだ」と怪物の生存を否定。
しかし海の怪物は上陸し、人肉を求める。
自衛隊の攻撃が怪物を仕留めようとしたその時、もう一頭の怪物が出現した。
これはリアルタイムで見ました。
家にパンフレットが現存してます。
ガイラ怖かった、人間食べてしまう。
「ガメラ対ギャオス」のギャオスも人間食べるんだけど、
あの人型に近い醜悪なガイラに食われるってだけで恐怖度がアップ。
「フランケンシュタイン対地底怪獣」の続編であるが、
出演者・役名・設定に違いがあり、
二つの物語はパラレルになっている。
なので、前作を見ないでこの作品を見ても違和感なく見られるのでは。
ちなみに前作で大きなキーワードとなっていた
「戦争」「原爆」などは確か殆ど出てきません。
最初に嵐の海で漁船が大ダコに襲われるんだけど
そこにガイラ(作品内ではまだ命名されてないが便宜上)が出現しタコを放り投げて漁船にのしかかる。
スチュアート博士は海の怪物とフランケンシュタインの関係を否定するが、
海の怪物は再度出現する。
地引き網に引っ掛かったガイラが遠方の海上に姿を見せるシーンはすごく奥行きを感じる場面。
その後ガイラは羽田空港に登場。
管制官の「羽田空港緊急事態、着陸不能!」のアナウンスが緊張感を増す。
ビルを破壊したガイラは中に手を入れて女性を捕獲すると、食っちゃう。
これは恐怖のシーンだった。
で太陽が射して日の光がガイラの顔を明るくすると、海底育ちで明るい光が嫌いなガイラは食っちゃった人の服だけ吐き出して海に逃げる。
この、ドラム缶などを蹴散らして海まで走って逃げて、泳いでゆくシーンも広々と開放感があるセットが広大な空港の敷地をよく表現している。
自衛隊は対策本部を設置、スチュワート博士、アケミ(水野久美)らから事情を聞く。
とあるクルーザーの甲板でのビヤガーデン。
外国人歌手(キップ・ハミルトン)がすっごくはずれてる歌「のどまででかかった言葉(註1)」を歌う。
で歌が終わった直後、ガイラが登場して歌手を掴み、食おうとする。
乗っていた人の機転でステージ用の照明をガイラに照らすと、光が嫌いなガイラは手を離して逃げだす。
陸に上がったガイラに自衛隊が攻撃の準備。
ガイラが跳ね上がってセットの丘の上に上がり咆哮するシーンも非常に奥行きがある絵で気に入っている。
自衛隊は高圧電流と殺人光線を使ったL作戦の準備を行う。
ここからは伊福部昭氏の「L作戦準備」通称メーサーマーチが延々とかかり
自衛隊が川へ機械を投げ込んで「よーし」と確認したり
「第一プラス線よし」
「第一プラス線よし」
「第一マイナス線よし」
「第一マイナス線よし」
と複唱したりと準備のシーンが続く。
しかしこれが見る側に作戦への期待感を膨らませる。
テンポゆっくりゆっくり目の「L作戦準備」の反復と作戦での複唱が融合し、画面に生命感が強調される。
そして!「陸上自衛隊」と大書されたメーサー殺獣光線砲車両(牽引式)が2両到着する。
東宝屈指の人気メカ初登場。おそらく「東宝メカ」で人気投票を行えば上位ベスト5は必至だろう。
のち平成に入ってから発展型のメーサータンク、ツインメーサー、メーサー搭載のヘリなどが登場したが
カッコ良さではこの牽引式とは比較にならない。
鈍い金色、パラボラ部分のバランス、「陸上自衛隊」のロゴ、と武骨さと近代的装備がマッチしたデザイン。
攻撃が開始され、電撃に続いてメーサー砲が準備される。
砲頭が鎌首を持ち上げて動く時のバランスが絶妙な美しさ!
21世紀の「ゴジラxメカゴジラ」の冒頭でこの牽引式が復活したが
この動く時のバランスまでは再現されなかったのが残念。
メーサー砲発射!って光線は稲妻型のアニメーション合成なんだけど
光線が当たっていく先のミニチュアの木が倒れるシーンは驚嘆。
さらにガイラが這って逃げるシーンでは光線がガイラを追いかけて発射されるんだけど
逃げるガイラを追って次々に光線が当たる先の木が倒れていく映像とアニメーションの緻密な合成に目を奪われる。
徐々に弱ってゆくガイラ、
「よしっ…」隊員の期待も高まる。
しかしその時、もう一頭の怪物(サンダ)が出現しガイラを救出する。
サンダは手を振り自衛隊に「去れ…」と伝えているかのよう。
山の神みたいないでたち。
「フランケンシュタインの怪物は二頭いた」と騒然。
サンダは研究所にいたフランケンシュタインの怪物が成長した姿であり
ガイラは怪物が琵琶湖に潜伏していた時傷ついた肉片が海に流れて誕生したクローンともいうべき存在だった。
だが人間に育てられたサンダと、海底で一人育ったガイラとは生活環境などから個体差が生じていた。
サンダはスチュアート博士と調査に山に来て崖から落ちたアケミを救出し、その時足を岩で痛める。
その頃ガイラは登山者を食い、戻ってきたサンダと戦う。
ガイラは足を負傷しているサンダを投げ飛ばし去っていく。
東京に警報が発せられ、アケミはガイラの手の中に捕まる。
しかしそこにサンダが到着してアケミは救出され市街戦。
サンダは同類ガイラを諭すような身振りで近づくが
孤独に育ち過剰な自己防衛を示すガイラには通じない。
戦いが夜明けの晴海埠頭になるともはやサンダの仏心は影をひそめ、ガイラとの肉弾戦に進むのみ。
メーサー砲も晴海に到着して三つ巴の死闘を展開。
しかし自衛隊は、博士側が「せめてサンダだけでも救えませんか」との問いに
田崎潤の司令官は「一匹も二匹も同じだ」と取りつくしまもなかったものの、
晴海での決戦ではメーサー砲はサンダに当たらずガイラのみを攻撃している。
見えないところで司令官の温情があったのか、
その辺科学者側と自衛隊側の邂逅のシーンがあったら
「サンダにメーサー光線が当たってない」意味が深まったと思うのだが。
二大怪獣の闘争は舞台を海上に変え
やがて外海へと進んでゆく。
そこに唐突に海底火山の噴火が。
しかし二大怪獣は火山噴火から逃げる素振りを見せずに闘争を続け、
次第に彼らは溶岩の中に飲み込まれてゆく…。
海底火山の噴火が何の伏線もなく始まるのがやっつけなラストではあるが
ここでは戦いながらのサンダの顔がアップになり
「ドウセ俺タチニハ安住ノ地ハ存在シナイノダ…
ナラバ共二消エテナクナロウ…」
と、自らとガイラの存在を消滅させるため、という目的を持ってのサンダの行動という演出が欲しかった。
それはもしかしたら「人間ノオカアサン、サヨウナラ」なのかも知れないが。
さすれば二頭の死を持って決着をつけるべく闘争を続けるサンダの決意が明らかになり、
サンダとガイラそれぞれの疎外感・孤独が浮き彫りにされ、
さらに作品に深みが増したのではないか。
食人鬼ガイラの恐怖、躍動する自衛隊、メーサー光線砲の圧倒的な攻撃、二大怪獣の骨肉バトル、
さらに伊福部音楽、水野久美様と見どころ聞きどころ満載の名作。
大看板ゴジラを登場させずにこういう作品をつくった当時の東宝の、余裕と関係者のパワーをも感じさせる。
今の子供にも見てもらいたいな、
こういう恐怖の、夢にガイラが出てきそうな、
夜一人でトイレに行けなくなるぐらい怖い映画。
【その他の見どころ】
序盤、海の底のガイラと潜望鏡で目が逢っちゃった漁師(沢村いき雄)はすっとんきょうな悲鳴を上げ、
海底からガイラが船を揺らしてるのかわからんが、海に落ちる。
その時船べりに自分から足乗っけてて今にも「ハイこれから落ちますよ」感が高くて、何回見ても笑ってしまう。
1966(昭和41)年東宝、ベネディクト・プロ
監督:本多猪四郎
脚本:馬淵薫、本多猪四郎
音楽:伊福部昭
特技監督:円谷英二
出演:配役
佐原健二:間宮雄三
水野久美:戸川アケミ
ラス・タンブリン:スチュワート博士
田崎潤:橋本陸将補
キップ・ハミルトン:外国人歌手
田島義文:平井(海上保安部)
伊藤久哉:泉田課長(海上保安部)
桐野洋雄:風間二佐
ヘンリー・大川:医師
沢村いき雄:漁師
西條康彦:アベックの若い男
睦五郎:ラス・タンブリンの声
註1:曲のタイトルは洋泉社 映画秘宝「エド・ウッドとサイテ―映画の世界」P212による。
(2010.0215)
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