ハリウッド版の出来具合は?「ドラゴン・タトゥーの女」
(2012年デビット・フィンチャー監督版)

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'12年3月10日、上野東急で見る。
「ミレニアム」シリーズ第1作のハリウッドによる再映画化。

スウェーデン版の感想で「ハリウッド版はスウェーデン以外の土地で撮ったらあの味は出ないだろうなあ(大意)」
とおいらが書いたのを知ってか知らずか(もちろん知るわけがない)
デビット・フィンチャー監督はスウェーデン・ロケを敢行した、とパンフレットには書いてありました。
やっぱりあのホントに寒そうでしかも暗さを持った空気は北米とはちょっと違う感じがします。

タイトルバックは黒い人体や多数のコードが液化していくようなイメージのCG。
音楽は何とレッド・ツェッぺリンの「移民の歌」
映画が始まる前に場内でかかっていた理由がわかりました
(パンフにも載ってましたがおいらは映画を観る前にパンフは見ない)。
女性ボーカルによるカヴァーヴァージョン。でもサビのところのシャウトが弱くて強烈なイメージはないのが残念。
この曲はいろいろと使われますね、プロレスのブルーザー・ブロディの入場曲だったり
邦画の「梟の城」の予告編でも使用されていたのを思い出します

まず、リスペッドのビジュアルぶりにちっと驚き。
眉毛脱毛。髪も額でそろえて切っていてツンツン立ってない。
眉なしってのは驚きましたね。確かにスウェーデン版ノオミ・ラパスとの差別化を考えたら
あの強烈な、意思の塊みたいな部分を表現している黒い眉をカットするっていうのは正しいのかもしれませんが。
リスペッドの中性的なキャラクターの表現としてはいい方向かもしれません。

ミカエルが少年時代、失踪した娘・ハリエットと合っていたという設定はなし。
だからミカエルが約40年前に失踪した娘の事件を捜査する依頼を受けたのは
単純に仕事(金)と宿敵の弱みを依頼者ヘンリックから提供されるという、ややドライな感じに焼き直されている。
なのでかハリエットが発見されるシーンではスウェーデン版ほどの感動はない
でもハリエットがヘンリック元会長と再会するシーンはやっぱり格別です

ストーリー展開は大体同じ。
ただリスペッドが父親に火をつける回想シーンはなく、
ミカエルとのベッドでの会話の中で終わる。

後見人の弁護士にセクハラ(ほとんどレイプ)されるシーン、
そのリベンジでスタンガンで失神させておぞましい復讐を行いリスペッドが
相手の弱みを握って優位に立つシーンも出てくる。

過激なシーンと言えば、ミカエルとリスペッドのSEXシーンも濃厚でモザイクがかかってる。
それから死体の写真シーンは監督のあの「セブン」を思い出させる。

真犯人がミカエルを捕えて殺そうとするシーンで犯人はBGMをかけるんだけど、
なんとこれがエンヤの「オリノコ・フロウ」(笑)。
何でこの曲?確かに北欧系ですが。
パンクラスの近藤と相通じる世界なのか?(我ながら意味不明)それはともかく、
シーンと曲とのギャップで犯人の狂気性を示しているのかもしれません。

ラストの方ではスウェーデン版でははしょられていたミカエルの敵をリスペッドが変装して陥れるシーンが
全然長い時間作られている。ミカエルは収監しない。

ところが「友達が出来た」とプレゼントの皮のコートまで買って
ミカエルに会いに行くウキウキのリスペッドは
ミカエルが編集長(女)と一緒に歩いているのを見て
怒って?プレゼントをゴミ箱に捨ててバイクでどっか行ってしまう
暗澹たるラスト。
アンハッピーエンドは監督の持ち味でしょうか?
確か「2」は行方不明になって(実は世界を放浪していた)
リスペッドがスウェーデンに帰ってくるところから始まっているはずで
「2」へのつなげ方、という点から考えるとリスペッドに動機を持たせるという展開になっていて、うまいと感じる。

どうしてもスウェーデン版とハリウッド版の比較になってしまうんだけど、
ハリウッド版は後発であるしスウェーデン版との差別化を考えなければなりませんし、
やはり豪華な出来になっていると思います。装飾部分が多い。
D.クレイグの起用とか、モザイク入れるほどのSEXシーンとか、猫の死骸とか。
スウェーデン版は小説が原作という感じが強いと思いますが、真摯な出来という印象。
リスペッドはやはり眉毛があった方がいいと思いますね・・・。

ダニエル・クレイグは3部作全てに出演する契約をしたということなので
「2」、「3」は必ず製作されることでしょう。
そうするとスウェーデン版の「2」、「3」に登場したニーダーマンやパオロ・ロベルトら
アクション系のキャラクターをだれが演ずるかというのも考えると楽しい。
でも「2」、「3」はどういうタイトルつけるんでしょうかね。「火と戯れる女」ではちょっと弱いと思うなあ。
ハリウッド版は「ミレニアム」って入れなかったのは痛いかも。でもこれも差別化か。
そうなると「ドラゴン・タトゥーの女 2」って感じでしょうか?安易だけど。
あと次回作のタイトル・バックは・・・多分ツェッぺリンの「ハートブレイカー」のような気がする。
勝手にそう思ってるだけだけど。

(12.0402)

スウェーデン版「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」はこちら
ミレニアム2はこちら
ミレニアム3はこちら

P.S.日本ではちょっと遅れて公開された「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」に
初代リスペッドのノオミ・ラパスがジプシーの占い女という役で出演していてびっくり。
いずれ書きます。

2011年アメリカ
原作:スティーグ・ラーソン
英語タイトル:The Girl with the Dragon Tattoo
監督:デビット・フィンチャー
製作:スコット・ルーディン
脚本:スティーブン・ザイリアン
音楽:トレント・レズナー 、アティカス・ロス

出演:配役
ダニエル・クレイグ:ミカエル・ブルムクヴィスト(雑誌「ミレニアム」の記者)
ルーニー・マーラ:リスベット・サランデル(警備会社ミルトン・セキュリティーの調査員)
クリストファー・プラマー:ヘンリック・ヴァンケル(スウェーデンの大会社の元会長)
ジュリアン・サンズ:若い頃のヘンリック・ヴァンケル



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