伊福部昭音楽祭(第一回)
20070304サントリーホール




07年3月4日、赤坂のサントリーホール。
入場するとロビーには作曲家の遺品のバイオリンやEPアルバムのジャケットなどの貴重品が数々
ショーケースに飾られて多くの人が魅入っている。まるで博物館状態。ゴジラの頭部のレプリカも。
売店も黒山の人だかり、作曲家のCDが飛ぶように売れている、いやマジで。
これこの機会を逃さずにとばかりに一人で何枚も買う人も(万単位の金だ)。
客層はさまざま。若い人、年配の人、相当年配の人。
若い女性や異国の方も見受けられた。
舞台上右に特設のスクリーンが見受けられ、ここで映像が流されると予想された。
自分の席は少し障害物にさえぎられてしまって見にくかったが、
サントリーホールは舞台中央にパイプオルガンが設置されているので
このようにしか画面を設置できなかったのだろうと感じる。
舞台左上には作曲家の写真。

伊福部昭の芸術9 伊福部昭音楽祭

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第一部1曲目は二十五弦筝による野坂惠子、小宮瑞代 (母子だそう)の「交響譚詩」。
2曲目は藍川由美の歌、高田みどりのティンパニーによる「アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌」。
真ん中の「北の海に死ぬ鳥の歌」が印象的。

第2部は映画音楽。
いきなりの「SF交響ファンタジー 第1番」。
曲が始まると大画面にゴジラ登場。
1954年の第1作の高圧電流による防衛線を突破するシーンと
「モスラ対ゴジラ」から、干拓地から出現してコンビナート破壊のシーンの合体。
オーケストラの生演奏と大画面の映像のコラボはすごい迫力、自然に涙ぐむ自分。
次いで曲が「キングコング対ゴジラ」の舞踊曲になると、
画面には「ファロ島の魔神」キングコングが登場。
映像の、島の現地人が太鼓をたたく映像とオーケストラの音がマッチ。
「宇宙大戦争」夜曲ではロケットが宇宙空間に飛び立つシーン。
その後「フランケンシュタイン対地底怪獣」の、バラゴンの白根山バンガロー急襲シーンから
「地球最大の決戦」のゴジラとラドンの戦闘場面の曲と映像。
気配に気づきゴジラが天を眺めると、姿を現すラドン。
そして再び「宇宙大戦争」から「怪獣総進撃」、ムーンライトSY-3の発進シーン。
曲が終わると客席の拍手が鳴り止まず。
東宝の富山社長が壇上に上がってトーク。司会者に「ゴジラの次回作は」と質問されると
「2010年以降の製作に向けて準備の準備中です」といったコメントが。

この後は特撮以外の映画から。
映画作品デビューの「銀嶺の果て」から、映像はオープニングとスキーのシーン。
オープニングシーンの曲は「ラドン」の空中戦闘シーンの曲の原型といったメロディー。
次いで「座頭市物語」。映像は予告編、勝新の殺陣。曲はリズムが「緯度ゼロ大作戦」のメインテーマに近い。
それから「ビルマの竪琴」、これも映像は予告編。曲は1954年の「ゴジラ」の、ゴジラが去った後の帝都の惨状を描くシーンの曲に近い。
この後東映の長編アニメ.「わんぱく王子の大蛇退治」から「アメノウズメの舞」。
映像はもちろん同作からのアニメーションだが、
映像と楽曲のマッチングが素晴しい。
ここで同作に携った現アニメ監督の高畑勲氏が壇上にてトーク。

そして「オーケストラのための特撮大行進曲」、
特撮の3つの行進曲を「バンドのための『ゴジラ』マーチ」として
吹奏楽用にアレンジした物を再び管弦楽仕様に戻したもので、今回が初演だそう。
曲はまず「怪獣大戦争」、Aサイクル光線車が出撃、
黄金の三ツ首竜「宇宙の魔王」キングギドラの市街破壊シーン。
Aサイクル光線車の、]星人の円盤攻撃シーン。
地球側の攻撃で、次第に力を失ってゆく]星人の円盤とキングギドラ。
次いで「サンダ対ガイラ」、画面にはあのメーサー殺獣光線車両が登場!
メーサー殺獣光線車両が山林でガイラを攻撃するシーン!大迫力!
再び涙ぐむ自分。映像は港湾でのサンダとガイラの死闘に再びメーサー光線が発射されるシーン。
そして平成作品「ゴジラVSメカゴジラ」から戦闘マシン「ガルーダ」のマーチ。
映像は鈴鹿山中で平成ゴジラを迎え撃つジェット戦闘機と戦車の進軍。
さらにガルーダ出撃のシーンから幕張でのファイアーラドン戦、平成メカゴジラも少し写る。
曲が終わるとまた拍手が鳴り止まない。

第3部は「日本組曲」、日本的なメロディーだがオーケストラの力強い演奏が素晴しい。
メインは「シンフォニア・タプカーラ」。こちらはアジア的というかユーラシア的というか
一口では括れないような多義性、深度が感じられる大作。
19世紀或いは20世紀初頭のヨーロッパの作曲家の作品と比べても見劣りしない作品ではないか。
再び涙ぐむ。
曲が終わってみればまた拍手が続く。
素晴しく楽しめた時間。
帰りに出口からスタッフの方より御土産のホワイトチョコレートを手渡される。
裏面には「二〇〇八年三月十六日 第二回伊福部昭音楽祭
杉並公会堂全館にて開催予定」の文字が。
・・・毎年開催されるとなれば楽しみである。

(2007.0304)

(追記)当日会場で購入した「映画音楽」のCDを帰って家で聴いてまた感動してしまった自分。
次回ライブでは「大魔神」が聴きたいなあ、と思いました。
また当日予定されていた熊井啓映画監督のトークは監督欠席のため取り止め。


伊福部昭音楽祭
2007年3月4日 東京・赤坂・サントリーホール
指揮:本名徹次
演奏:日本フィルハーモニー交響楽団

第1部 プロローグコンサートとトーク 伊福部昭とヴィルトーゾ
「音楽の生まれる時」
1.二十五絃箏甲乙奏合交響譚詩(16分) 筝:野坂惠子 小宮瑞代
2.アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌(14分) 歌:藍川由美 ティンパニ:高田みどり
或る古老の唄った歌
北の海に死ぬ鳥の歌
阿姑子と山姥の踊り歌

(30分休憩)

第2部 映画の世界
「映画人、伊福部昭を語る」
3.SF交響ファンタジー 第1番(13分)
4.「銀嶺の果て」(3分)
5.「座頭市物語」(2分) 琵琶:首藤久美子
6.「ビルマの竪琴」(4分)
7.「わんぱく王子の大蛇退治」より"アメノウズメの舞"(7分)
8.オーケストラのための特撮大行進曲(7分)(新編纂・初演)

(30分休憩)

第3部 管絃楽の響
「大楽必易」
9.管絃楽のための「日本組曲」(23分)
10.シンフォニア・タプカーラ(30分)

(アンコール)
11.シンフォニア・タプカーラから抜粋

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