ヴンダー?ヴィレ?「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」過酷な新展開と散りばめられた謎。



総監督:庵野秀明
監督:摩砂雪、前田真宏、鶴巻和哉
製作:カラー(2012年)
音楽:鷺巣詩郎
主題歌:宇多田ヒカル

<あらすじ>前作より14年が経過。ゲンドウ・冬月(ネルフ)とミサト・リツコら(反ネルフ組織ヴィレ)は袂を分かち敵対していた。
初号機からサルベージされた碇シンジはヴィレの戦艦・AAAヴンダーの中で目が覚めたが14年前のままの姿、精神構造。
エヴァパイロットとしての価値を失いまたニア・サードインパクト誘発の原因と指摘され冷遇されて苦悩する。
そこにエヴァmark.9によりヴィレの戦艦ヴンダーから脱出したシンジは渚カヲルと出会い、全てをやり直すためエヴァ第13号機に搭乗する。

11月18日、西新井で見る。
驚きました。
「序」「破」ともそれなりに旧作品をトレースする出来でしたが、
「Q」は全く新しいストーリーでした。

戦闘シーンは3ないし4回。
初公開(11月17日)の前日の「破」の地上波放送の最後でも「Q 冒頭6分38秒TV版」として公開された映像、
宇宙空間における初号機奪回作戦、2号機対人工使徒?ネーメシスシリーズ。
北の海でのAAAヴンダー対人工使徒?
終盤でのセントラルドグマからヴンダー艦上に移る
ネルフ側エヴァMark.09、Mark.06(&寄生していた第12使徒)対ヴィレ側エヴァ2号機、8号機。

しかし背景が宇宙空間や空だったり
ジオフロントの地べたが髑髏(大きさから考えると人骨ではないような?インフィニティとやらのものか?)だったりで
「巨大ロボットの肉弾戦」という大きさを感じさせる絵ではなく。
普通に、山とか街並みとか(街の場合は続いて足元の自動車とか、電線とか)
そういう巨大感を表す小道具がないのでエヴァが大きく見えない。
終盤戦も動きがやたら激しくて何だかよくわからなかった。

過去作品を考えるとそもそもTV30分番組からスタートしたアニメであり
かつ人物側のドラマに割かれる時間が多く、アクションシーンに時間的制限があったことだろう。
だから戦闘シーンは実は攻防がかなり単純である。
だがそれを賄って余りある緊張感のある演出(音楽含む)と
一発で決める集中的な決着により名場面が生まれていった。
だが今回はそういうところが見られなく、巨大感がなくてただ動きと展開が素早くて何だかよくわからない。
まるで昔の大技一撃で決まるプロレスと、近年のスピード重視で技連発のプロレスの比較みたい。

それから「序」「破」が使徒との戦いがメインだったのに比べると
「Q」では使徒の存在自体がおざなりになっているような感じです。
戦闘場面はネルフ側エヴァ対ヴィレ側エヴァがメインですし、第12使徒は黒いコードみたいな地味なデザインですし。
「全ての使徒を倒した」みたいな台詞もなかったようですし。

【Mark.06】
前回「破」の登場時は満を持しての、大物感醸し出しての登場だったではないですか。
「Q」で中核になるような活躍がある機体だと思いましたけどね。
「序」から月面で建造されていた描写がありますし、渚カヲルの主機というニュアンスがしましたし。
エヴァコラボの服売ってる「錦」でも一時期Mark.06柄が多かったですし。
それがニアサードインパクトの後自律システムに変更されたとはいえセントラルドグマに放置ですからね・・・。
零号機に似たMark.09の方が動いてる場面が多い。何でこの落差?
この「Mark.06の出番が少ない件」は最後の推測につながります。

【マリ】
ヴィレ側に所属していました。理由は不明。
終盤でゲンドウを「君」よばわりしていたり、
アスカを「姫」と呼んでいたり相変わらず不可解な発言が多い。
「破」初登場時からそういうキャラであり
秘密をミサトやリツコより知っている風でもあるが
14年間の間に「破」では顔を合せなかったミサトやリツコとどのぐらい情報交換したり理解し合えたのか。

また冬月がシンジに見せたユイの写真に、マリに似たメガネの女性が写っていること、
先に書いた「ゲンドウ君」発言。
或いは昭和歌謡曲を口ずさんでいる状況からマリは相当年だという説、
またアスカの母なのではないかという説もネットから見受けられた。

まあ「破」の序盤の仮設5号機のパートで加持に「大人の〜に子供」と言われていたので
年長説はどうか?
若く見えるのは「エヴァの呪縛」かも知れないが「クローンだから年取らない」という説も。
「破」の序盤の仮設5号機に搭乗した時「使用言語」を聞かれて「初めてだから日本語」と答えていて
仮設5号機への搭乗がエヴァデビューと思われる。
それ以前は練習の機体しか乗っていないはずだし「エヴァの呪縛」で年を取らないのは「破」以降のことではないか?
14歳でアスカ産んだとも思えない。
「Q」で アスカはマリを「コネメガネ」と呼ぶ。誰のコネ?
マリは「破」で2号機に騎乗した時は「他人の匂いのするエヴァもいい」と発言。
母だったらアスカを他人呼ばわりはしないと思う。

しかし「破」ではミサトやリツコより機密を知っているような感じがしてましたが、これは未だ謎。

【渚カヲル】
思いますに「Q」は渚カヲルをどうやって退場させるか、
というハナシだったのではないかと思います。

結果、思いっきりシンジを落ち込ませることに成功しています。
「やれやれ・・・また3人目か、変わらないなあ、君は。合えることを楽しみにしているよ。碇シンジ君」
「はじめまして、お父さん」
「こんどこそ君だけは幸せにしてあげるからね。碇シンジ君」
全てを知っているような謎のセリフばっかり(あるいは輪廻説)。
で、旧作では死ぬ時も超然としていたのに今回はゲンドウの策略にはまった様子で「同じ種類の槍が二つある」
と動揺を見せ、第13の使徒に堕されて、
Mark.06の登場と同じでかなり期待を持っての登場にもかかわらず、何をするかと思えば殆ど何もしないで始末されてしまう。
最後もシンジに「また会えるさ」と謎の言葉。
「Q」の登場シーンではシンジ以外の人物との接触が全くないというのは特筆。
TV版では綾波と話すシーンがあって
「君は僕と同じだね」とお互いの素体がアダムだったりリリスだったりしていることを暗示させる台詞があるのだが。

ピアノをシンジと一緒に練習するっていうのは
せっかく二人で事を成すという進行が、槍を抜くシーンで破綻する伏線でしょうね。

【綾波レイとリリス】
セントラル・ドグマ内のリリスは首を切られ、
槍が刺されて指令室に綾波みたいな巨大な首があります。
ニアサードインパクトの時にリリスが変身して旧劇場版のような巨大綾波になったという解釈でしょうか。
Mark.06が首を落としてニアサードインパクトを阻止したのではないかと。

【ヴィレの面々&ヴンダー】
ネルフの大方の職員が反ネルフ組織「ヴィレ」に行ってしまったもんですから驚き
(ミサトさん命の日向やリツコさんとアヤしい関係?の伊吹マヤは当然と言えば当然か)。
ミサト、リツコは戦艦AAAブンダーの艦長、副艦長。
でシンジに冷たい態度。
・・・んでもロボットアニメで戦艦が出てくるとなあ、どうかなあ・・・。
まあマジンガーZでも敵側(Dr.ヘルやミケーネ帝国)の要塞はマジンガーZより巨大でしたけどね。
ヴンダーはデザインが鳥みたいだけど、コアにペンペンが使われている、っていう設定だけはギャグになりそうなのでご勘弁。
まあヴンダー初登場のシーンはそれなりに迫力はありましたけど、それはエヴァじゃないような気がします。
それから「アダムスの器」とも呼ばれたネルフ側エヴァMark.09が「ヴンダーの主」と言われているのも謎。
考えるに、そもそもヴンダーはネルフが建造していたのをヴィレが奪った、
ヴィレ側は動力源として初号機を使っているが、本来の動力源はMark.09だったのではと推測される。
ヴィレ&ミサトの行動原理は「人類補完計画の阻止」ということでしょうか。


それから加持さんが出ませんね。
ヴィレ側にいる可能性もありますが、
TV版のように暗殺されてしまったのかもしれません。
まあミサトがその遺志を継いで行動してるっていうのが正しいかもしれません。

【碇シンジ】
「破」の感動的ラストが実は台詞通り「綾波と引き換えに世界を崩壊させた」ことにされていているのは悲惨です。
爆弾首輪も屈辱的です。主人公なのに。

【予告】
もう予告は信用しないことにしました(笑)。
「破」の最後の「Q」の予告を見返してみると、登山?のシーンとか小さい綾波が複数いるシーンとか、
Mark.06がセントラル・ドグマに降下しているシーンとか
肩出してるマリがシリアスな顔してメガネをはずすシーンとかありましたが
そんなシーンは「Q」には全然出てきませんでした。

で「Q」の最後の「シン」の予告にはカラーリングが違うMark.06みたいな量産機や
2号機と8号機がキカイダーみたいな半々のカラーリングになってる機体が出てました。
まあ量産機はともかく(でも出るのなら旧劇場版の白い機体がいいと思うんですが)
2+8号機は出ないでもらいたいなあ(笑)。
まあ予告通りにはいかないようですので・・・。

【次回作はどうなる?】
流れからシンジはアスカ、黒綾波とともにヴィレへ。ヴンダー内でシンジ、黒綾波は拘束される。
ヴンダーはネルフ本部に総攻撃。
黒綾波のからだに、初号機に取り込まれた綾波の魂が入り込んで合体。
シンジは初号機に搭乗、シンクロ率回復。ヴィレ、量産機あるいはネーメシスシリーズの攻撃により全滅。
ゲンドウ、冬月による人類補完計画が初号機によって発動されて碇ユイ登場(綾波が変身?)。
エヴァ全機が消滅して呪縛が解けたシンジとアスカが体の成長を感じる(ブリキの太鼓)。
二人が新しい人類のアダムとイブになって終了。
輪廻だから、ラストは宇多田ヒカルの曲ではなくて「残酷な天使のテーゼ」がかかる。
「甘き死よ、来たれ」はかからない(ホントは好きな曲なのでかかって欲しい)。
こんな感じでどうでしょうか。

Mark.06の部分で述べた件ですが、思いますに「破」終了後
そもそもの「Q」から大幅な内容の変更があったのではないでしょうか。
さすれば予告との不整合も納得が出来ます。

「破」の中盤の第3新東京市の場面。
都市に朝が訪れ、通勤、通学する人々の集団。
信号が青になった横断歩道から一歩踏み出す足。
日差しの温かみが溢れるようなBGMが効果的に都市の生命感が描かれ、
文明賛歌・人間謳歌を描写させるような名シーン。
「破」はこの部分とクライマックスで「人間として生きる」その情熱を描いた傑作だと思っていたが
ラスト直後にニアサードインパクトが起きてしまって人類の過半数が死滅してしまい、
シンジの願いとは裏腹に綾波もサルベージ出来ず、
「破」のラストで感動した観客は14年後のシンジとともに「Q」で奈落の底に突き落とされる。
「Q」のイメージは破滅、死である。ラストの3人以外。
果たしてそんな「Q」にエンターテイメントと感動はあったのか。

そして完結編「シン」に感動はあるのか。
それを確認するため
もうちょっとだけ長生きをする努力をしてみようかと思う。
しかし、「シン」は2013年に公開できるのか?

(12.1202)

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