「シン・ゴジラ」誕生を推理。

【映画パンフレット】 シン・ゴジラ SHIN GODZILLA 監督 庵野秀明 キャスト 長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ

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7月29日、公開初日のレイトショーで錦糸町で見る(レイトショーだったので1300円)。
物語は東京湾内を漂流する無人のプレジャーボートの発見、
その直後の謎の揺れによるアクアラインの浸水、
海底爆発による海上での水蒸気の噴出から始まる。

その後巨大不明生物が湾内から出現、上陸・進撃を開始する。
巨大不明生物は内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川)によりのち「ゴジラ」と命名されるが
ゴジラはどこから来たのだろう。

矢口と米国大統領特使・カヨコ・アン・パタースン(石原)との資料交換で
7日前に米国より帰国した日本人の科学者・牧悟郎の存在が明らかになる。
東京湾の無人のプレジャーボートも彼の所有物だった。
彼の研究内容には近い将来の巨大不明生物の出現が予測されていて、
その出自は「60年前、各国が大量の放射性廃棄物を深海に投棄したが
それを深海に太古から生き延びてきた古代生物が食べて、
放射能への耐性を持つ新生物が誕生した」ということだそうである。

「60年前、各国が大量の放射性廃棄物を深海に投棄した」場所がどこなのかは劇中では語られていない。
絶対に東京湾ではないはず。
ゴジラは日本に来たのだから、おそらく太平洋のどこか。
ではゴジラ第1形態が太平洋から東京湾内に侵入するまで、米国、日本、どこからも発見されなかったのか?

発見されていなかったとしたら、
ゴジラは東京湾内で誕生して巨大化したのかも知れない。

ここからは仮説です。
真のゴジラはまだ深海に存在していて、或いは眠っていて
DOE(米国エネルギー省)と牧博士はゴジラの肉体の一部(平成シリーズでいうところの「G細胞」)を
すでに採集して研究を進めていた。
日本から追われ米国でエネルギー関連の研究をしていた牧博士は日本に強い恨みを持っていた。
妻を亡くした、というセリフもあったように記憶する。
牧博士は日本に復讐するために「ゴジラの肉体の一部」を密輸して入国しプレジャーボートに乗った。
遺書めいたメッセージを残し、靴を揃えて、眼鏡を外し、
「ゴジラの肉体の一部」を飲むか注射するかして体内に入れ、それから海へ飛び込み、
牧博士は自分がゴジラに変化したのではないか。
そして自分の意思(意思はゴジラに変化した後もうないのかも知れないが)で東京を破壊し、日本に復讐するつもりだったのではないか。


「私は好きにした。君らも好きにしろ」
牧博士が残したメッセージである。

わたしは好きでゴジラになって日本に復讐するつもりだから、君らもわたしを攻撃して殺してくれてもかまわない

そう読んでもいいのではないか。

実体は別に存在していて、その肉体の一部(細胞?)、もしくは血が体内に入って
実体と同じ姿になって東京に上陸する、というモチーフは「ゲゲゲの鬼太郎」の「大海獣」を連想させる
(もっとも鬼太郎は自分の意思でなく、天才少年博士山田にだまされて大海獣の血を注射されて変化するのだが)。

上陸したゴジラは「ゴジラ+牧博士(人間)」であり
(「遺伝子情報が人間の8倍」というセリフも「ゴジラ+人間」だから?)
ゴジラの元(これが本当のゴジラ<シン・ゴジラ>?)はいまだ深海で放射性廃棄物を食べているのかも知れない。

【音楽】

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監督(総監督)がエヴァの庵野監督ということで音楽もエヴァと同じ鷺巣詩郎だったらいいな・・・と思っていたので
決定発表があった時はうれしかった。
どんなアプローチがあるのか・・・期待して映画を見ましたが音楽的には仰天の連続でした。

メインタイトルで昭和29年の作品の「ドーン、ドーン」という
ゴジラの足音的な音が聞こえたときはある程度想像はしましたが。

第2形態が上陸・進撃するときの曲は鷺巣詩郎の新曲で不安感をあおる曲でしたが、
八ツ山橋襲撃で立ち上がった第3形態になる時、不気味な曲がかかって・・・

昭和29年第1作の最初の上陸の曲がそのままかかりました。
伊福部昭の曲がそのまま。驚きました。音は大きいですがモノラルです。
その後戦闘ヘリによる攻撃寸前のシーン、ゴジラ一時撤退後の朝のニュースのシーンは新曲。
会議のシーン(政治家が主役の映画なので、会議のシーンも多い)で
エヴァンゲリオンの『「DECISIVE BATTLE」のリズムだけでメロディーがない曲』が何回もアレンジを変えてかかる。
期待、衝撃が入り混ざった感覚。ゴジラでエヴァの曲!
この作品で鷺巣詩郎もゴジラ音楽家の仲間入りしたことは大変うれしいことであり、
『「DECISIVE BATTLE」のリズム』がゴジラ音楽の仲間入りをしたことは大変興味深いことであります。

劇場パンフレット、サントラ盤の解説を読むと
伊福部の旧曲の使用を提案したのは庵野総監督だそうで
音楽ユニットは当初伊福部曲の再録音を進めていたそうであるが
様々な展開から伊福部の原曲をそのまま使用することになったそうである。
理由は伊福部曲の啓蒙ということだそうですが、それはそれでいいことです。

もちろん昔から見ているオールド・ファンは驚きと懐かしさに血が燃えると思うが
新しいファンの心臓の動悸も十分アップできると思っている。

ただサントラ盤買って家で聞いてみると
序盤のゴジラ出現(まだ這ってる)の不気味な舞踊音楽のような曲、朝のニュースのサックスのジャズ、
ヤシオリ作戦での重機出撃のシーンの曲などは新曲のようで、とても魅力的なんですが、
伊福部昭のゴジラ、「宇宙大戦争」の曲、
鷺巣詩郎のエヴァンゲリオンでもかかる『「DECISIVE BATTLE」のリズム』の
2大超有名な曲の前には、影が薄い感じが否めません。

この辺は先に述べたように「ゴジラxメガギラス」の大島ミチル、「GMK」の大谷幸のように
鷺巣詩郎も新しいゴジラのライトモチーフに直球勝負で存在感出してもらいたかったという気持ちもあります。
でも全体的に音楽はいいです。サントラ盤CDも売れているようですし。


【ネタばれ】
最初に這って地上に上がった第2形態は、茶色で目がくりくりしていて、
間違った映像が出てきたのかと思いました。そのぐらい異様です。ゆるキャラみたい。
ゴジラが這っているというのも驚き。
第2形態がマンションのビルをよじ登るようにして破壊するシーンは
産卵するために障害を乗り越えて蟹や蝦蟇のように水場に「まっすぐ」進む感じで
本能で動いているので人間との感情的な交渉を拒否しているかのよう。

政治家が主人公の映画なので、とにかく会議のシーンが多い。
「巨対災」の会議のシーンでエヴァの「DECISIVE BATTLE」みたいな曲がかかったときは驚きとともに少し笑いましたね。
きっと鷺巣詩郎のマイフェバレットなリズムなんだろうな・・・。

米軍がゴジラを爆撃すると、それまでの自衛隊の攻撃では効果がなかった攻撃が多少なりとも効いたようで
ゴジラが叫び声を上げる。
するとゴジラはげろりんと燃料のように液体を吐き出し、その後下顎を蛇のように二つに割りながら
ものすごい勢いで火炎を放射する。
東京港区辺りは火の海と化す。
火炎は集束されて紫の熱線となり、ビルを斬り裂く。
米軍の背後からの攻撃に、ゴジラは背中から何条もの熱線を放射、バルゴンの「悪魔の虹」のよう。

ゴジラ活動停止、
米軍核兵器使用のカウントダウン、
「矢口プラン」による血液凝固剤の作成進行、日本各県のプラントでの必要量の製造、輸送、
・・・この辺エヴァの「ヤシマ作戦」そのものです。
「局地的に停電させて電力を集中させて怪物を退治する」という父・「原子人間」のネタは
ゴジラシリーズでは「GMMK東京SOS」で使われているので
血液凝固剤を口腔投与するヤシオリ作戦になったのかも?
まあ不定形の敵→作戦として停電、というエヴァでのラミエル出現→ヤシマ作戦の流れは
「帰ってきたウルトラマン」のプリズ魔の回がそれで
庵野監督はきっとこの回の話が大好きなんでしょう。

ゴジラがエヴァの使徒的イメージを持つ部分が多々あります。
火炎のあと細い熱戦を吐くゴジラも使徒ラミエルそのまま。
米軍攻撃以降の展開は先に書いたようにそのままヤシマ作戦的になるので
ゴジラの中の人がラミエルなんじゃないかと思っちゃいます。
第2形態の鰓の形状が使徒サキエルのそれに似ていること、
粘り気がある血を噴出する部分も使徒に似ています。

電車の逆襲!
最初の作品以来、ゴジラに踏みつぶされ、壊され続けた電車ですが、
今回は攻撃に参加!新幹線大爆破!(笑)これは痛快ですねえ。
さらにビルを投壊させてゴジラをテイクダウンさせるシーンなど、
東京駅を中心とした要塞都市による攻撃はエヴァの「第三新東京市」そのものです。

凝固剤経口投与のシーンで重機が登場しますが
色が黄色と赤でこれはエヴァの零号機と弐号機のカラーリングでは?
ちなみに初号機の紫はゴジラの熱線の色に使用されたのでこの部分では使われなかったのでは?

ゴジラ活動停止中に尻尾の先がパカッと開くシーンがあるんですが
最後ゴジラが凍結された後に尾の先がアップされると、
ゴジラと人間が混ざったような何者らが(エヴァの「インフィニティ」のようだ?)
尾の先から出てこようとしたまま固まっている。
これは続編への布石だったのでしょうか。

(続編の展開予想)凍結されたゴジラは徐々に粉砕されレアメタルとして処理され
その売り上げで東京は復興するが、
尾の先から分裂して潜伏していた存在が地下(豊洲とか)で成長し突如東京の真ん中に出現する。
タイトルは「シン・ゴジラの逆襲」、定番の名前です。
と思っていたら2017年作品の発表が・・・次回作は何とアニメ!
アニメでゴジラの巨大感が見せられるのかなあ・・・
「ザ・ウルトラマン」のようにならないことを祈って、期待半分・不安半分。
しっかし今回の「シン・ゴジラ」が興行的に大成功したので、敷居が高いのは間違いない。

上陸が神奈川県で、
都内の被害地域が東京多摩地区、大田区、品川区、港区当たりで
最終決戦の場が東京駅周辺という東京西南部で、
映像も多くが東京北東部から写している感じ。
これ意図的に東京スカイツリーを入れないようにしているのだとと思います。
東京スカイツリーは権利問題があるらしく勝手に壊しちゃいけないのでしょうね。
ということはゴジラはこちらに来ないから、我が家は安心だ・・・。

2011.3.11以降の日本の災害対策を盛り込み、
かつ日本国、国民の強度を示した点で
「時代性を描いたゴジラ」として最高点に近い作品として完成したと思う。
エンターテイメント性もあるし、エヴァのテイストが多いがそれは監督(総監督)の味というものだと思います。
同じネタ、引用ネタがあっても面白ければ認知されてしまうのかも知れない。
今後世界市場でどんな評価がなされるか、楽しみです。

何より感じたのが、久しぶりの国産ゴジラ映画が大変面白く、その面白さが世間にまで広がったこと。
庵野総監督ありがとう、次もよろしく(次はシン・エヴァか?)。

('16.0922)

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2016年東宝映画
総監督・脚本:庵野秀明
監督・特技監督:樋口真嗣
准監督・特技総括・B班監督:尾上克郎
音楽:鷺巣詩郎
出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、市川実日子、柄本明、大杉漣、片桐はいり、神尾佑、國村隼、斎藤工
嶋田久作、諏訪太朗、高橋一生、塚本晋也、鶴見辰吾、手塚とおる、ピエール瀧、古田新太、松尾スズキ、余貴美子、渡辺哲ほか
ゴジラ・モーションキャプチャ:野村萬斎

<あらすじ>現代日本に巨大不明生物が上陸。
内閣は次々に会議を開き対策を練るが、
巨大不明生物は変身して進撃。
アメリカ特務大使の依頼で捜索していた、失踪した博士の残した資料によると
生物は約60年前に各国が海底に廃棄した核により古代生物が変化したものだという。
生物はアメリカのコードネーム、博士の出身地・大戸島での伝説に倣い「ゴジラ」と命名される。
政府内に「巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)」が設置される中、
ゴジラは倍近い大きさの第四形態と化し、鎌倉に上陸する。

ブログの日比谷シャンテで撮影したシン・ゴジラのオブジェの画像はこちら

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