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絵はその1点を売ってしまえばもう手元にはないのである。同じ物が作れてアート性のあるものを…。版画シリーズへの動機は軽かったが、やり出してみるとブレーキの利かない凝り性が出てきてしまい、彫刻刀にエッチングやペン画の細密さを要求してしまった。それとシリーズ物のテーマ作りの難しさや分量の多さが加わって体調を崩す程苦労をし、それでも80点彫り、1版120枚から150枚程墨1色摺りをしたので9,000枚以上は作った。だが数は多くても結局これは80点と考えている。最新のカラーシリーズは、30年前、版画出発当初からの予定だった“全作品カラーで”を、やっと実現させたというわけだ。すべての作品のイメージを変えるため、まず始めに一点一点色だけ施した画面を作りそれに版の方を重ね合わせて摺るという方法をとった。80版を各10枚ずつ摺って800作品作ったことになる。 |
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