大統領に一番近い側の人ですら「何が秘密で、それが誰に知られてはいけないのかさえ知らない」とこぼすほど、ここでの秘密の守られ方は堅かった。それどころか、大統領自身にも何が秘密なのか見当すらつかず、ついに自ら反対勢力側にたのんで、自分の秘密を探らせるよう、自室に盗聴器を仕掛けさせていたのでした。まもなく重大な事実がわかり、全議員が非常招集され(この国では、特に重大な会議は大統領にはないしょで開かれるしきたりになっている)秘密の決議が全会一致でなされました。じつは会議の模様は大統領に盗聴されていたのですが、とにかく、この決議というのは、此度判明した事実を“今日のことは、一切お互いに忘れよう”と約束しあうことでした。反対勢力がこれ以上追及しなかったのは、これが国外にバレるのは、あまりにも自分たちの誇りに傷がつくと考えたからでした。さて、盗聴によって真実を知ってしまった大統領は自殺してしまい、一大秘密事項もあっけなく世界中に知れわたってしまったのですが、私としましては、ブタが田舎から出てきて、いつの間にやら大統領になり上がるというケースはかなりたくさんあり、この国だけがそれを秘密にしようとする必要はないし、ましてや、ブタが自分がブタであることを知って自殺するなど、全然無駄であると思うのです。 |